治療に不可欠な診断を
診断薬・機器で支える
その貢献の実例の一つが、PCR検査だ。PCRはDNAを大量コピーできる手法で、ロシュが1990年代から医療への応用に取り組んできた。これを用いたウイルス検査がコロナ禍では感染拡大防止に一役買っている。
ロシュ・ダイアグノスティックスがカバーする分野はPCR検査以外にも多岐にわたり、一般的な検査項目から、さまざまながん検査までが含まれる。病院やクリニックで行われる血液検査などを通じても読者の多くが同社の製品やサービスに触れているはずで、その役割は非常に深く、広い。
こうした深さと広がりの背景には、売り上げの実に2割を研究・開発に投資するロシュグループ総体としての技術力に加え、ロシュ・ダイアグノスティックスとしての日本への浸透力がある。
「ロシュは1924年に現地法人を設立して以来、日本の医療で重要な役割を果たしてきています。診断薬・機器事業も日本でスタートしてから50年、当社が分社化で生まれてから20年以上を経て、日本にしっかり根付いています。外資系企業というと、短期的な利益に左右されがちなイメージがありますが、当社は異なります」(工藤本部長)
達成感が得られる
人と社会が良くなる仕事
こうしたありようは人材の採用や育成にも見て取れる。
「私たちは、チャレンジ精神があり、自走できる人を求めています。そのために、新人研修やフォローアップ研修など、段階に応じた研修のほか、『チェックイン』というユニークな制度も持っています。これは、評価面談とは別に、いつでも気軽に上司とキャリアや能力開発などについて相談できる制度です。きめ細やかなコーチングを通じて、社員の成長を促しているのです」(工藤本部長)
人を大切にする企業文化には、失われつつある日本企業の美点が残されているようにさえ感じられるが、同社はダイバーシティの実現に取り組む世界企業であり、医療に革新をもたらすイノベーション企業でもある。
工藤本部長は次のように続ける。
「診断と、その先にある治療に欠かせないソリューションの提供は、人と社会が良くなる仕事であり、誇りや達成感が得られる仕事でもある。多様な社員が喜んで働けて挑戦も成長もできているから会社も成長している。ロシュ・ダイアグノスティックスはそういう企業です」