クリエイティブの質を高め、共同作業を効率化し、時間とコストを削減し、環境負荷を低減させて、ARやVRといった最新の顧客体験にまで対応する。「3Dのビジュアライゼーション」を可能にするアドビの「Substance 3D」は、混迷を極める時代の経営者にとって福音となるアプリケーションだ。
今、情報技術の革新とパンデミックの影響が相まって、多様な業界・業種で仕事の空間がフィジカルからデジタルへと移行している。サプライチェーンにおける共創にはさらなる速度と確度が求められ、顧客との接点においてはブランドロイヤルティを醸成するコミュニケーションが必須となった。もちろん、あらゆるコストを抑えながら、環境への負荷も低減していくことが望ましい。こうした時代の要請の全てに応えなくてはならない経営者は、どこに全体最適の光明を見いだせばいいのか。
そうした課題に対するソリューションとなるアプリケーションを提供しているのがアドビだ。その名は、「Substance 3D」。アドビといえば、PhotoshopやIllustratorといった独自のソフトウエアにより、30年以上も世界中のクリエイティブな仕事を支え続けている企業だ。自信を持って展開している「Substance 3D」とは、どのようなアプリケーションなのか。
「一言でお伝えすると、3Dの高品位なビジュアライゼーションを可能にするソフトウエアです」
アドビで主に企業向けに業務効率化・ワークフロー改善の提案を行っている加藤修一氏は、続けてこう解説する。
バーチャルサンプルが経営課題の解決に貢献
「例えば、スポーツブランドのミズノではシューズデザイナーが『Substance 3D』を使用しています。シューズの開発段階ではサンプル(試作品)が生み出されます。開発から実際の生産に至るまで、商品の仕様の決定に用いられるものです。ミズノは、このシューズサンプルをリアルからバーチャルにシフトする取り組みを行っているのです」
スポーツシューズにはナイロンや合皮をはじめとして表革、スエード、ポリウレタン、プラスチック、紐といった多様な素材が用いられる。それぞれの素材に特有のテクスチャーを再現しながら、3Dによってフォトリアルな描写を可能にしてくれるのが「Substance 3D」だ。サンプルがリアルからバーチャルに置き換わることで得られるベネフィットは多い。ミズノのフットウエアデザイナーの中村敬氏は、その効果を次のように説明する。
「まず、海外の工場とのやりとりなどでリアルでは月単位でかかっていたサンプルの作成期間が、週あるいは日の単位にまで短縮されます。サンプルの完成後には海外の各拠点に現物を輸送して確認作業に入っていましたが、そうした時間もバーチャルならメールで送るだけなので大幅に短くなる。サンプルの製作や確認作業にかかる時間を短くできるということは、デザイナーが創造性を発揮する時間がその分長く取れるということ。年間で考えれば、トータルのサンプル数は膨大なものとなるので、時間とともにコストの削減効果も大きくなります」
すなわち、企業が持つ競争力の源泉となる製品のクリエイティビティは向上の一途をたどり、時間とコストの鎖から解き放たれる。世界各地のマーケットから修正依頼があったとしても、バーチャルサンプルなら造作ない。あらかじめ、チャレンジングなプレゼンテーションを仕掛けることもできる。
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「そして、膨大な数のリアルサンプルは環境にも負荷を与えることにつながっていましたが、バーチャルサンプルはその低減に寄与します。またサンプルを各国に輸送する必要がなくなるため、物流の面においてもCO2の削減に貢献します」(中村氏)
近年、ESG投資の気運の高まりとともに、企業はサプライチェーン全体におけるCO2の削減率が問われるようになった。「Substance 3D」は、持続可能性を追求する旅へのチケットにもなるのだ。