新飛行経路運用により
世界有数の空港へ成長
羽田・成田の首都圏空港の玄関口としての機能を飛躍的に高めたのが、2020年3月29日から運用が開始された羽田空港の「新飛行経路」だ。
騒音・安全対策を講じた上で新飛行経路の運用は始められたが、この新飛行経路の運用や成田空港の高速離脱誘導路の整備などにより、首都圏空港の空港処理能力(年間発着容量)は、約83万回(20年3月29日以降)に増強された。新飛行経路運用開始前の首都圏空港の発着容量は約75万回(15年3月29日以降)だったから、その効果は絶大だ。
「この発着容量は、アジアのトップクラスの空港に並びます。今後は成田空港の滑走路の延伸と新設により、100万回を目指していく計画です。これが実現すると、東京(首都圏)は、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界のトップクラスの発着容量を持った都市になることができるのです」と丹呉課長補佐。
ではなぜ、羽田・成田空港が世界トップクラスを目指すのか。新飛行経路の運用を開始する前、国土交通省は首都圏の国際競争力の強化、地域と海外の交流による地域活性化、訪日外国人旅行者の受け入れ増加などを目標とした。
「IATA(国際航空運送協会)のデータ(グラフ参照)によると、世界の航空需要は、新型コロナ感染拡大により、20年第2四半期は国際線、国内線はともに大きく落ち込みましたが、その後は右肩上がりに回復しており、特に国内線に関しては22年第4四半期にはほぼコロナ前の水準に戻る国もあると予測しています。コロナ禍収束後は、特にアジアを中心とした経済成長に伴って、航空需要は右肩上がりに増えていくでしょう。その需要をきちんと取り込んで、首都圏、そして地方へ行き渡らせることが羽田空港の重要な役割だと捉えています。企業活動の活発化に伴って増える航空貨物輸送についても同じことがいえます」(丹呉課長補佐)
コロナ禍収束後、日本のビジネス客や観光客が世界の国々を訪れるために羽田空港を活用することはもちろん、海外からのビジネス客や観光客に羽田空港に来てもらい、そこから首都圏、あるいは国内線ネットワークを生かして各地方都市へ足を延ばす。それが地方経済の活性化、ひいては日本経済全体の活性化に貢献するはずだ。
それを裏付けるデータもある。21年5月に公表された日本政策銀行と日本交通公社共同調査結果※によると、観光旅行をしたい国・地域の中で日本は、アジア居住者を対象とした調査でも欧米豪居住者を対象とした調査でもトップとなった。海外の旅行者は、真っ先に日本を訪問したいと願っているのだ。
新飛行経路によって機能が強化された羽田空港が、国内外の利用客でにぎわう日は近い。
※「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(第2回 新型コロナ影響度特別調査)」。アジア居住者を対象とした調査では、日本は2020年6月に実施した第1回調査同様1位。欧米豪居住者を対象とした調査では、第1回の2位から1位になった。