喫煙環境の整備を通じて、地域や社会に貢献することを目指す日本たばこ産業(JT)。その新たな取り組みとして、喫煙所を災害時の「帰宅支援ステーション」や、平時の「防災情報ステーション」などとして機能させるプロジェクトが始動した。デザインやイベントを通じて防災情報を発信するNPO法人プラス・アーツとのコラボレーションによって、ユニークな「防災喫煙所イツモモシモステーション」が生まれようとしている。
喫煙所の整備を通じて社会や地域に貢献する
自治体が設置するものだけで、全国に2800カ所以上あるといわれる屋外喫煙所。改正健康増進法の施行によって屋内でたばこが吸える場所が制限されることから、その“受け皿”として、都内などでは新たな屋外喫煙所を設ける動きもある。
その屋外喫煙所を、災害時の「帰宅支援ステーション」や、平時の「防災情報ステーション」などとして機能させるプロジェクトが動き出している。日本たばこ産業(JT)が2021年6月から検討を始めた「防災喫煙所イツモモシモステーション」プロジェクトである。
「当社は『吸う人も吸わない人もここちよい世の中』の実現を目指し、自治体や民間企業による、たばこを吸わない方にも配慮した喫煙環境の整備を支援してきました。その取り組みをさらに発展させ、現在では各地域との共創という観点から、喫煙所の整備を通じて地域や社会に貢献することを目指しています。『防災喫煙所イツモモシモステーション』もその1つです」と説明するのは、JTの田中洋平課長だ。
同社はこれまでにも、壁面にモダンアートのようなピクトグラムを描いた屋外喫煙所や、地域の観光情報を発信する喫煙所など、さまざまな切り口で、地域貢献のための喫煙所づくりを支援してきた。
「例えば、観光地であれば旅行者がたばこを吸っている数分の間に、壁に掲げられた観光情報を見て興味を持っていただければ、地域の観光振興に少しでもお役に立つはずです。同じように、他にも喫煙所を何かの役に立てられることがあるのではないかと考え、最も身近な地域課題の1つである“防災”にたどり着いたのです」(田中課長)
東日本大震災以降、全国各地で大小の地震が頻発し、地球温暖化の影響からか、かつてないほど大規模な豪雨や洪水などに見舞われるケースが増えている。そうした災害発生時の被災者支援拠点や、災害情報の発信拠点、さらには平時の防災情報発信拠点などとして屋外喫煙所が利用できるのではないかと考えた。
「喫煙所はたばこを吸う人のための場所ですが、吸わない人でも『あそこにある』というのは何となく記憶に残っていると思います。その場所が、いざというときに自分たちの身を守ってくれる場として機能することが分かっていれば、少しでも安心してもらえるのではないかと思いました。とはいえ、わたしたちは防災のプロではありません。そこで、さまざまな専門家や大学、自治体、企業などにヒアリングを行い、一緒にプロジェクトに取り組んでいただける相手を探しました」と田中課長は振り返る。
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