アートやイベントで防災情報を発信するNPO法人と連携
JTと「防災喫煙所イツモモシモステーション」プロジェクトでタッグを組むのは、NPO法人(特定非営利活動法人)「プラス・アーツ」だ。
神戸市を拠点とするプラス・アーツは、デザインやイベントなどを通じて防災情報を発信する活動を15年以上にわたって行っている。その始まりは、阪神淡路大震災から10年目の2005年、兵庫県と神戸市から依頼を受けて企画・運営した子ども向けの防災イベントだった。
永田宏和 理事長
「もともと、アートをテーマとした子ども向けのイベントを手掛けていたのですが、災害のことはまったくの門外漢でした。そこで、170人ほどの阪神淡路大震災の被災者にインタビューやアンケートを行い、被災地でどんなことに困ったのか、どんなものや知識が役に立ったのかを徹底的に聞き取りしました」と語るのは、プラス・アーツの永田宏和理事長である。
インタビューを重ねる中で、一般に出回っている防災や被災後の対応に関する知識には、あまりにも間違いが多いことに気付いたという。
「例えば、停電に備えて懐中電灯を用意しておくことは防災の基本のように思われています。ところが、実際に被災した人の話を聞くと、『両手が使えるようにヘッドライトを用意しておくべきだ』と言うのです。そうした非常時に有用な知識が学べる機会をもっと増やさなければならないのではないかと思いました」(永田理事長)
しかし、一般に防災イベントは人が集まりにくい。さまざまな訓練を行い、盛りだくさんの情報も提供されるが、イベントそのものに「楽しい」「参加してみたい」と思えるような魅力に乏しいからだ。
そこでプラス・アーツは、美術家の藤浩志氏が考案した遊ばなくなったおもちゃの交換会「かえっこバザール」*を防災イベントの人を惹きつける仕掛けとして開催することで、子どもたちの興味をひいて集客を図った。防災訓練も、子どもたちが遊びながら災害時に役立つ知識や技術を身につけられるようなプログラムにしたところ、参加した多くの子どもや親から「楽しくてためになる」という大きな反響が得られたという。
このイベントは、その後も「イザ!カエルキャラバン!」という名称で催され、開催地は全国に広がっている。
プラス・アーツは、この他にも社会人向け、高齢者向けなど、さまざまな年齢層に向けた防災イベントを開催し、自治体や民間企業などからの要請も年々増加している。コロナ禍前の2019年には、「イザ!カエルキャラバン!」だけで年間約70件もの開催支援を実施した。
参加者の年齢層に関係なく、基本的な考えは、イベントやデザインを使って、防災の知識を「楽しみながら学んでもらう」ということだ。JTは、そんなプラス・アーツの考え方や取り組みに共感し、「防災喫煙所イツモモシモステーション」プロジェクトへの協力を依頼した。
*遊ばなくなったおもちゃを「かえるポイント」という疑似通貨と交換し、その「かえるポイント」を使って他の子どもが持ち込んだおもちゃを“購入”する仕組み