アルテアエンジニアリング
取締役社長 加園栄一氏

トヨタ自動車やフォードをはじめ世界の自動車業界、そしてボーイングやエアバスなどの航空業界、さらに世界のトップ7行の金融グループなど、多くの顧客を抱えるアルテアエンジニアリング。米国に本社を置くソフトウエアベンダーとして、シミュレーションの分野で豊富な経験と実績を持つが、シミュレーション以外にも、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、データ分析・AI(人工知能)という三つの事業をグローバルに展開している。設立25周年を迎えた日本法人は、このほど新たに医療・ヘルスケア分野への進出を明らかにした。プロジェクトの概要と狙いを取締役社長の加園栄一氏に伺った。

三つの事業で、顧客の意思決定を変革する

「シミュレーション、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、人工知能(AI)を融合し、活用することにより、お客さまの意思決定を変革する」――。アルテアエンジニアリング(以下、アルテア)のビジョンには、こうある。

 同社は1985年、米国ミシガン州で設立され、当初はエンジニアリングサービスを手掛けていた。5年後の90年からはソフトウエアの開発、販売をスタートし、現在はソフトウエア事業が主力となっている。

 2017年には米国ナスダック市場に上場し、20年度の売上高は4億7000万ドルに上る。従業員数は3000人強、1万1000社を超える企業を顧客に持ち、25カ国に86のオフィスを構え、グローバルにビジネスを展開している。国内では96年に日本法人が設立され、今年25周年の節目を迎えた。日本法人の社長を務める加園栄一氏は、次のように説明する。

アルテアエンジニアリング
取締役社長 加園栄一氏

2002年入社。およそ20年にわたり国内の自動車、電機、航空宇宙、重工業などの顧客の開発業務へ尽力し、ビジネス成長の中心的役割を果たす。20年より現職

「もともとは、コンピューターを使って、衝突や振動、流体、電磁場といった物理現象をシミュレーションするソフトウエアの開発をメインに行っていたことから、自動車業界に数多くのお客さまを持ちます。日本法人においては売り上げの半分以上が自動車業界となっています。グローバルでは、その次に航空宇宙が続き、アジア地域では電機、工業製品などの業界で豊富な実績があります」

 事業ポートフォリオは、ビジョンにもある通り、「シミュレーション」「ハイパフォーマンスコンピューティング」「データ分析・AI」の三つから成る。それぞれについて、簡単に紹介する。

莫大なコストを削減できる、緻密で正確なシミュレーション

 シミュレーションは、さまざまな物理現象をコンピューター上で数値計算により再現、分析することで、製品開発に生かす技術である。例えば、新しい自動車の開発には衝突安全性能の評価が必要になるが、そのために試作機を作り、何度も試験を行っていたのでは、膨大な費用と時間がかかる。シミュレーションソフトを使い、コンピューター上で仮想的に試験を行えば、試験の回数も減り、開発期間の短縮やコスト低減にもつながる。

 航空機の設計においても、最適化シミュレーションが活用されている。主翼の内部には「リブ」と呼ばれる補強材が幾つも入っているが、燃費を上げて飛行距離を延ばすには、機体の軽量化を図る必要がある。一方で、強度を維持するという、相反する要求も満たすために、アルテアのソフトを使って、リブの配置や主翼の構造を最適化し、設計に生かしていく。