日本の医療・ヘルスケア業界でデータによる課題解決に挑む
グローバルにビジネスを展開するアルテアは、アジア太平洋地域では5カ国・地域に拠点を持ち、23カ国に対してサービス、ソリューションを提供している。日本法人の役割は、グローバルで開発されたテクノロジーやソリューションを、日本国内の企業に提供し、必要に応じてカスタマイズやコンサルティングを行うことだ。
前述の通り、現状では自動車、電機、重工業などの企業が顧客の多くを占める。そして今回、新たなチャレンジとして、データ分析・AIのビジネスで、医療・ヘルスケア分野に進出した。
医療・ヘルスケア分野は、もともとシミュレーションのビジネスで実績があった。例えば、ペースメーカーのアンテナ設計における電磁場解析や、血管などを内側から広げるステントの構造解析などで、アルテアのソリューションがグローバルに活用されてきた。一方、今回の取り組みは、さまざまな医療情報を収集、統合して分析し、新たな知見を得ることで、病気の治療や予防、未病などに生かそうというものだ。
「医療業界もデジタル化が進み、電子カルテや薬の投与履歴のデータ、健康診断のデータなど、全てがほぼ電子化されています。加えて、個人でもスマートフォンやスマートウオッチを通じて、いろいろなヘルスデータを取得しています。そういったデータをわれわれのソリューションを通じて、お医者さんや医療機器メーカーの方々にもっと活用していただきたいと思ったのが、今回の経緯です」と加園氏は話している。
実は、医療業界のICT化、医療情報のデジタル化が進展する一方で、大きな課題もある。例えば、電子カルテ一つ取っても、複数のメーカーやソフトウエアベンダーが存在し、データフォーマットがそれぞれバラバラになっていることだ。
「データはあるけれど、一元化されていない。電子カルテのフォーマットも違うし、まだまだ手書きのお医者さんも残っている中で、このままではデータ活用は難しいと皆さん言います。しかし、われわれのデータ準備のツールを使えば、フォーマットの異なるデータを集めて一元化することが可能で、データを活用する前段階で劇的に医療関係者のお役に立てると考えています」(加園氏)
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アルテアはデータ分析・AIの領域で、2018年に米国のDatawatch社を買収した。同社が持つ先進的なデータ準備・予測分析・可視化ソリューションを、今回、日本発の取り組みとして、医療・ヘルスケア分野に打ち出していく。国内の医療機器メーカーとの協業で病院・医療施設にアプローチし、将来的には海外展開も視野に入れている。
「データ活用の重要性に加えて、国民の健康に対する意識もますます高まっていくことでしょう。われわれはソフトウエアベンダーとして30年を超える歴史を持ち、自動車、航空宇宙をはじめ幅広い業界で経験を積んできました。その信頼と実績、最先端の技術を持って、これからは医療業界に変革を起こしていきたいと考えています」と語る加園氏は、変革の意志を共にするパートナーの募集も呼び掛けている。