立地優位性を生かした
大型案件が増加

 さらに企業誘致活動を強化するため、独自の優遇制度を充実させているのも茨城県の大きな特徴だ。その一つが「本社機能移転強化促進補助」。AIやIoTなど新たな成長分野の研究施設・本社機能の誘致を促進するもので、全国トップクラスとなる最大50億円の補助額を設定している。

 現在までに、この補助の認定を受けた企業は22社に及ぶ。

アジア太平洋地域初の生産拠点を決定した、エスティ ローダー カンパニーズの日本法人EL・APSCのマシュー・グラウドン社長(左)と大井川知事

 大型の案件としては、20年12月に、世界的な高級化粧品メーカーである「エスティ ローダー カンパニーズ」が、下妻市にアジア太平洋地域における新たな生産拠点と、子会社であるEL・APSCの本社機能の立地を決定した。新拠点には新たな生産技術や先進的エンジニアリング設備を導入する予定だ。

 また21年10月には、「日立建機」が土浦市(同社土浦工場内)に、次世代建設機械の研究開発機能強化のためエンジニアリング棟を新設し、播州工場(兵庫県)をはじめとする県内外の研究開発拠点を集約することを決定、補助の認定を受けた。

日立建機の「本社機能移転強化促進補助」の認定式。左から日立建機の平野耕太郎社長、大井川知事

 県ではまた、国の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に連動した、県独自の上乗せ補助を行う制度「国内投資促進強化プロジェクト事業」を創設、同補助金を活用した誘致活動も進めてきた。21年7月には、アルコール消毒液で国内トップシェアを持つ「サラヤ」による医療機関向け消毒剤製造工場の新設(北茨城市・同社関東工場内)が決まり、同補助金の第1号の認定となった。

 カーボンニュートラルの実現に不可欠な成長分野として積極的に誘致する事業分野では、次世代自動車産業の集積に向けた戦略的企業誘致に力を入れている。自動車産業は今、世界的な脱炭素の流れを受けて、内燃機関から電動化への移行という一大転換期を迎えている。自動車メーカーは電動化への対応を迫られ、積極的な設備投資に動き始めている。こうした流れの中、21年8月に「エンビジョンAESCジャパン」が、国内最大級となる車載用の、次世代リチウムイオンバッテリー製造工場の新設を決定した。

エンビジョンAESCジャパンの立地決定発表。左から大井川知事、松本昌一エンビジョンCEO、アシュワニ・グプタ日産自動車COO

 立地場所は、茨城町にある茨城中央工業団地2期地区。この誘致に関して県は、前述の「国内投資促進強化プロジェクト事業」の補助金による最大限の支援を提案、最終的に知事のトップセールスで立地に至った。県としては、将来的に同社の工場が地域の雇用や関連企業の立地を促し、EV生産における世界の一大拠点となることを期待している。

 また半導体関連産業においても、大規模な設備投資や研究開発投資が見込まれるため、県では、従来の「本社機能移転強化促進補助」の対象を拡大し、新たに「次世代産業集積・カーボンニュートラル強化プロジェクト事業補助金」を創設した。これは生産拠点や研究開発拠点を県内に整備する最先端産業の事業者を対象に、整備費の一部補助を行うものだ。さらに、研究機関や大学が数多く立地する、つくば市葛城地区に「最先端リサーチパーク」(約10ヘクタール)を創設し、最先端の半導体関連の研究開発・生産拠点の集積形成を図っている。

 もともと茨城県は、県北部の山間部を除いて高低差の少ない平たんな地形で、安定した気候もあって、従業員も暮らしやすく、工業系の人材が多いなど、生産拠点の新設に適している。これら数多くのメリットは広く認知されつつあり、大井川和彦知事の下、積極的な企業誘致の姿勢を背景に、優良企業の立地ニーズは加速度的に増え続けている。

大井川和彦茨城県知事

茨城県の企業誘致・
本社機能移転への取り組み

 本県は、圏央道をはじめとする高速道路や港湾、空港などの充実した交通インフラや、首都圏への近接性、研究機関の集積など優れた立地環境を有しており、経済産業省の「工場立地動向調査」では、過去10年間の工場立地面積と県外企業立地件数が全国1位になるなど企業立地において高い評価を頂いております。

 また、成長分野の本社機能や研究開発拠点に対する全国トップクラスの補助金に加え、21年度、半導体や次世代自動車など最先端産業の生産拠点などを対象とする補助金を新設するなど優遇制度を拡充し、企業誘致に積極的に取り組んでおります。

 今後も多くの企業さまから本県を選んでいただくため、事業環境の向上にも積極的に取り組んでまいります。

 本県での新たな事業展開を心よりお待ちしております。