臨場感あふれるメタバースの世界では、人の熱気や感情などのディテールも伝わり、共感や共鳴を生みやすい。
「例えば、遠隔地にいる人同士でも、心の通った対話ができるようになり、リモート社会における人を起点としたコミュニケーションを再定義できるのではないかと考えています。当社はこのメタバースにおける新しい対話の在り方を『メタコミュニケーション』と名付けました。当社では、独自の調査に基づいて人の価値観を14の『Human & Values Model』として定義しましたが、こうした価値観モデルとも組み合わせながら、メタコミュニケーションの研究を進めています」
メタバースで
ビジネスの速度が変わる
佐藤氏が率いるプロジェクトは、リッジラインズが示すメタコミュニケーションの可能性に強い関心を持ったクライアント企業と共に2021年7月にキックオフ。クライアントとリッジラインズの双方から、若手のエンジニアやクリエーターを中心とするプロジェクトメンバーが選抜された。その大半は20代後半から30代のいわゆる「Z世代」、あるいは「ミレニアル世代」である。
佐藤氏は「メタバース前提でコミュニケーションやビジネスがどう変わるのか。まだ誰にも見えていないゴールに向かってチャレンジできるメンバーを選びました。柔軟に発想できる若い人たちの創造性に期待しています」と話す。
ウェブエンジニアとして豊富な経験を持つ水野恵太氏は、「未知の分野で最初は正直不安もありましたが、メンバーみんなで新しい技術や知識を身に付け、今はメタバースの世界をリードしていこうと話し合っています」と意気込む。
また、ブロックチェーン技術に精通する山本大貴氏は、「クライアントとコンサルタント、クリエーターとエンジニアという垣根を越え、フラットな関係でビジョンを議論しながら、プロジェクトを遂行しています。個人的にはメタバースとブロックチェーンの相性の良さを実感しています」と手応えを語る。
コロナ禍でのプロジェクトであり、リモート前提での開発となったため、コミュニケーションの取り方を工夫した。「メンバー全員がウェブ会議システムをつなぎっ放しにし、誰が今どんな仕事をしているのか分かるようにしました。思い立ったときにすぐ相談したり、誰かに負荷がかかっていれば助け合ったりできるので、心理的安全性が高まり、チームのモチベーションが上がりました」。人工知能活用のプロジェクトに数多く携わってきた戸松研人氏は、そう説明する。
現在は毎朝、雑談のための時間を設けたり、定期的にオフィスに集まるなどして、オンとオフ、リアルとオンラインを組み合わせながらプロジェクトを進めている。