2030年の札幌がゴールではない、次の世代につなげる地道な努力を
東京2020オリンピック・パラリンピックという大きなイベントを通して、日本は共生社会への第一歩を踏み出した。そしていま2030年に向け、冬季オリンピック・パラリンピックの札幌への招致活動が始まっている。札幌市はかつて1972年に冬季オリンピックを開催し、それを契機に街の基盤整備が進み、国際観光都市として大きく発展したという歴史を持つ。
その札幌市が2度目のオリンピック、そして初めてのパラリンピック開催で目指すビジョンの中には、共生社会実現のためのUD化の推進がある。高橋氏は、札幌での冬季大会開催に何を期待するのか。
「札幌市は早くからバリアフリーへの意識が高く、1980年代から障害者や高齢者が普通の生活が送れるよう、そして共に暮らし、生きることを進めてきた都市です。東京2020オリンピック・パラリンピックでは札幌でマラソン競技が行われましたが、アクセシビリティの意識は高く、バリアフリーのインフラについては東京より改善する部分が少ないのではないかと思います。後は、札幌市以外の競技場の周辺でも、札幌と同様、さらには世界標準のアクセシビリティが実現できればと思います」
北海道にはもともと福祉関係の施設が多いといわれている。広大に広がる各地域に、障害者用の施設を設ける必要があるからだ。そのため北海道では障害者の人たちと“出会う機会”がたくさんあるという。「心のバリアフリーを実現するには、とにかく障害のある人と出会う頻度が多い方がいい。札幌にはそうした基盤がある」と高橋氏は言う。
冬季オリンピック・パラリンピックの開催を目指している2030年は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成年限とも重なる。札幌市では2030年までの期間を、札幌が持続可能な街であるための礎を築いていく大切な道のりとして捉え、都市と自然が調和した雪の街でSDGsの先の未来を展望する大会の実現を目指している。開催が決まれば、札幌や北海道はもちろん、日本全体で共生社会の実現に対する機運が高まっていく可能性は高い。
高橋氏は「大切なのは、2030年がゴールではないということ。インクルーシブな社会を実現するためには、次の世代につながっていくイメージを持ち、地道な努力を重ねることが欠かせません。東京2020オリンピック・パラリンピックを一過性のものとせず、そのレガシーを引き継いでいくためにも、2030年の大会は、開催地の札幌市が中心となって全国を巻き込んでいく姿勢が非常に重要になると考えています」と締めくくった。
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