日本は世界に冠たる長寿国である一方、国民の幸福度は諸外国に比べて低迷している。また、成長が有望視されるヘルスケア産業に関わるプレーヤーの多くが国内市場にとどまっており、海外で成長機会を獲得できていない。その原因はどこにあるのか、どうすれば挽回できるのか。NTTデータ経営研究所の柳圭一郎社長と、矢野勝彦パートナーに聞いた。
——「人生100年時代」といわれる中、わが国のヘルスケア制度・産業が抱える課題は何でしょうか。
柳 医療技術の進歩などによって先進諸国の平均寿命は右肩上がりで伸びており、中でも日本は男女とも平均寿命が世界最高水準となっています。
代表取締役社長
柳 圭一郎 氏
柳 圭一郎 氏
一方で、介護の必要がなく健康的に日常生活を送れる「健康寿命」を見ると、日本の平均は2019年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳と意外に短い。公衆衛生や食生活の改善などを背景に今後も平均寿命が伸びると予想されますが、だからこそ健康寿命を伸ばすことが、一人一人のウェルビーイング(肉体的に健康で、精神的・社会的にも満たされた状態)を高めるためにも、医療・介護制度の持続可能性を高めるためにも非常に重要です。
40代、50代の頃から健康増進や病気予防・未病に対する意識を高め、実際に行動変容を促す、つまり、一人一人のやる気スイッチを見つけて、それを入れる仕組みをどう構築していくかが大きな課題といえます。