京都・上賀茂にキャンパスを構える京都産業大学は、幅広い学問領域をカバーする10学部を擁する総合大学だ。1965年の創立時から大学名に「産業」を冠し、産学連携に先駆的に取り組んできた同大学の教育・研究活動の今とこれからを、黒坂光学長に聞いた。

京都産業大学
黒坂 光(あきら)学長
大阪府出身。1981年京都大学薬学部製薬化学科卒業、86年同大学大学院薬学研究科製薬化学専攻博士課程修了。同年より京都産業大学で講師、助教授、教授を歴任。2013年京都産業大学総合生命科学部長、17年同大学副学長を経て、20年10月より現職。薬学博士(京都大学)。大学コンソーシアム京都理事長

──2020年に学長に就任されて以来、「将来の社会を担って立つ人材の育成」という建学の精神に立ち戻ろう、というメッセージを強調されています。

黒坂 本学の創立は、学園紛争の嵐が吹き荒れていた1965年。混迷の時代に「大学の本分に立ち返り、優れた人材を育てよう」という志から生まれた大学です。

 それから半世紀以上がたちましたが、「混迷の時代」という意味では、今と当時は同じです。今こそ大学の社会的使命を胸に刻んで心を一つにすることが、私たち大学人にとって非常に大事だと考えています。

──創立当初から「産学連携」も強く推進されていました。

黒坂 大学名に「産業」という言葉を冠していることからも分かるように「象牙の塔に閉じこもらず、産業界と連携し、知を社会に役立てよう」という方針は創立時から一貫しています。「大学は基礎研究の場」という意識が強かった当時の情勢を考えると、とても先進的です。学祖・荒木俊馬の専門は宇宙物理学でしたが、理学部と経済学部という一見対照的な2学部で大学をスタートさせました。このことからも、「異分野の融合から新たな価値を生み出そう」という強い意志が伝わってきます。

──産業界と連携した実践的なキャリア教育に定評があります。

黒坂 実践を旨とした手厚いキャリア教育が本学の大きな特色であることは間違いありません。インターンシップやPBL(課題解決型学習)といった個別の施策は決して珍しいものではありませんが、その背景には「キャリア教育センター」を中心として、多くの企業とコツコツと築いてきた信頼関係の蓄積があります。だからこそ、4年間を通じて学内と学外(企業や地域)をダイナミックに行き来しながら学びを深めていく、独自のカリキュラムが実現しました。「コーオプ教育(産学連携型の人材育成)」にもいち早く取り組んでおり、この分野の日本の先駆であると自負しています。