3分野でグローバルトップに、これからが本当の勝負
渡辺 まさに先ほど私が申し上げた順番が成立しているわけです。オリックスさんはフーリハン・ローキーを買収した後、資金を含めて経営資源を提供した。それによって、同社は事業を成長させ、上場を果たし、ハッピーになった。
これは、フーリハン・ローキーの幹部から聞いた話ですが、彼らはオリックスさんから経営資源を得ただけでなく、内部統制などを含めた経営ノウハウを学んでいます。「オリックスの傘下に入っていなければ、あれだけ短期間で上場することはできなかった」と言っていました。
一緒になって初めて分かったのですが、フーリハン・ローキーのシニアメンバーは平均勤続年数が30年くらいで、日本の会社より長い。これもオリックスさんの影響ではないかと個人的には思っています。
宮内 オリックスの子会社だった頃も、幹部の勤続年数は長かったですね。ロサンゼルスの古びたビルにオフィスがあり、派手さはなくて大きな案件は狙わないけど、チームの結束力が強くてミドルマーケットをがっちり押さえていました。
当時、オリックスは海外での買収を積極的に進めていましたが、彼らのアドバイスが非常に役立ちました。その専門性に感心したことを覚えています。
――M&Aアドバイザリーとして国内最大手だったGCAが、フーリハン・ローキーと経営統合したことに対して、周囲の反響はいかがですか。
渡辺 お客さまの期待が非常に高まっていることを感じます。GCAは海外拠点をどんどん増やし、連結売上高の9割を海外が占めていました。特にここ4〜5年は半導体やソフトウエアなどハイテク系の領域で海外でのM&A案件を増やしていましたが、日本の製造業などのお客さまからすると、少し距離がありました。
一方、フーリハン・ローキーは製造業や消費財、金融など幅広い領域で実績があります。加えて、GCAはアジアと欧州に強く、フーリハン・ローキーは米国でトップクラス。両社が経営統合したことで、お客さまには事業領域の面でも地理的にも一層充実したサービスを提供することが可能になります。
宮内 フーリハン・ローキーとしてもGCAと一緒になることで、アジアと欧州で一気に存在感を高めることができたので、いいM&Aだったのではないですか。
渡辺 そう思います。私は08年のリーマンショックの頃から「10年後に独立系アドバイザリーファームとして世界一になるために今何をすべきか」とずっと考えてきました。GCA単独でも世界一を目指せると思っていましたが、デジタル化やコロナ禍で変化のスピードが加速する中、フーリハン・ローキーと組めば一気にトップを狙えると考えました。
ちなみに、GCAとフーリハン・ローキーが経営統合したことによって、「M&Aアドバイザー」「プライベートエクイティM&Aアドバイザー」「テクノロジーM&Aアドバイザー」の3分野でグローバルトップ*になりました。
統合メリットを生かして、私たちがお客さまにどれだけのバリューを提供できるか。これからが本当の勝負だと思っています。
宮内 渡辺さんのように経営トップは10年先を見る、あるいはミクロの世界に入り込むのではなく「マクロ観」を持つことが重要です。その上で、自社の業態や事業構造、ビジネスモデルを見直していく。それが、CEOの一番大事な仕事だと思います。トップが四半期決算ばかり気にしている会社は、あまり見込みがありませんね。