(右)システムインテグレータ 執行役員 E-Commerce事業部長 尾崎雅朋氏
2022年5月、クリエーティブやドキュメント関連の分野で世界的なソフトウエアメーカーとして知られるアドビと、EC(電子商取引)サイト構築パッケージの老舗であるシステムインテグレータはソリューションパートナー契約を締結した。両社は今後、協業の下でECプラットフォーム「Adobe Commerce(アドビコマース)」を日本国内で提供し、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を支援していくという。この2社が特に注目しているのはBtoCはもちろんのこと、BtoBを行う企業の課題解決だ。企業が抱えるデジタル課題への取り組み、企業間での取引拡大やコスト削減につながるデジタル基盤の改善など、2社の知見と今後について語ってもらった。
DXに必要な三つの要素とは何か
長期化するコロナ禍、人材不足、原材料費の高騰によるコスト高騰、円安などを受けて、ますますデジタルシフトの重要性が高まっている。企業は競争を勝ち抜くため、デジタル基盤の新規構築やDXを加速しているが、なかなか思うように進んでいないケースが多い。特にBtoBを行う企業のマーケティングや営業、受発注といった「顧客接点領域」はデジタル化の遅れが目立つという。
「コロナ禍でデジタル化は進んでいますが、BtoBではせいぜい訪問営業がオンライン会議に変わり、請求書が紙からPDFになった程度。他に大きな変化は起きていないのが実感です」。そう語るのはシステムインテグレータ(以下、SI社) 執行役員の尾崎雅朋氏である。
商社系SIerにてシステムインテグレータのECサイトパッケージ「SI Web Shopping」、ERPパッケージ「GRANDIT」ビジネスを取り扱い、2005年にシステムインテグレータにジョイン。プロジェクト管理パッケージ「SI Object Browser PM」の立ち上げも担当し、主力3事業であるEC事業、ERP事業、OB事業(OBPM)の管理職を歴任。昨年度からはE-Commerce事業部の責任者として、事業戦略、事業計画の立案、運営実行全般を担当
SI社は、ERP(基幹システム)などのバックエンドの業務システムから、ECサイト構築パッケージなど顧客接点に関わるシステムまで、幅広い製品を自社で開発・販売、さらにそのカスタマイズまで一貫して提供でき、業界においては稀有なベンダーである。また大手SIerとの共同で大手企業のECサイト構築を支援するなど、多くの日本企業を顧客としている。創業は1995年で、東証スタンダード市場に上場している老舗のソフトウエア開発会社だ。
尾崎氏はDXには必要な三つの順序があると語る。それは、①アナログで行ってきた業務をデジタル化(デジタイゼーション)し、②ワークフロー全体をデジタル化(デジタライゼーション)する。そして、さらにそれらを発展させて③全社的な業務、製造、商品販売、組織風土なども含めて変革していく(DX)という3点なのだという。
「BtoBにおいても価値交換プロセスのデジタル化が必要なのですが、例えばわざわざ人間対人間でなくてもよい受発注に関する処理をデジタルに置き換えることがまず考えられます。
取引先の在庫確認、納期の確認、価格を確認したりする作業は、Webサイト等でデジタルに確認できた方が体験として圧倒的に優れています。ここだけだと小さなデジタル化ですが、これだけでも対人営業のリソースに余裕ができるので、コミュニケーションの質を上げることにつながります。
さらに、こちらの方が大事なのですが、デジタル化されていることにより、顧客が何に興味があり、どのような行動を取っているかを可視化、把握できるようになります。データの利活用により、営業の付加価値をさらに高めることができるようになり、継続的な取引拡大につながるのです」(尾崎氏)