同社・川添崇正事業本部長は、「21年4月からは改正建築物省エネ法により、非住宅の大規模建築物に加え、300平方メートル以上の中規模建築物にも省エネ基準へ適合させる義務が課せられ、省エネ適合性判定などの手続きが必要になりました。今後は住宅を含めた全ての建築物に適用されるのではないでしょうか」と、国の省エネ基準強化の姿勢を語る。

 省エネ基準へ適合しない場合や、必要な手続き・書面の整備などを怠った場合は、確認済証や完了検査済証が発行されない。既存の建築物においても、REIT(リート:不動産投資信託)を運用する投資ファンドなどから、投資対象の建築物の省エネ評価ニーズが高まっているという。また、ESG投資を実践する生命保険会社のような機関投資家がオフィスビルを移転するときは、「単なる省エネ評価ではなく、建築物に関わる部分のESGデューデリジェンスの依頼が来ます」と川添事業本部長。

 しかし、建築業界のESGや省エネに対する意識は、全体で見るとまだ低いと、丹野社長は指摘する。

「多くの建築主や入居企業、大手設計事務所、大手ゼネコンは省エネの必要性を理解していますが、中小設計事務所や中小ゼネコンの中には不勉強な会社も見受けられます。行政が基準を作っても、それを実現するのは建築主であり、設計者であり、工事の現場の人たちです。指定確認検査機関として、当社では省エネ適合性判定という仕事を通じ、建築に関わる人たちの意識を底上げし、省エネとその先にあるESGへ“導く”役割を果たせればと思います」

公正な建築物の検査という指定確認検査機関の役割を果たすため日々奮闘するJ建築検査センターのプロジェクトの面々。左から鈴木営業本部長、川添事業本部長、川瀬渋谷支店長、田村係長、矢﨑事業部長、永嶌主任

プロジェクトに関与し
工事の省エネを実現

 省エネ意識が希薄な現場では何が起こるか。その実例を同社の鈴木健博営業本部長がこう説明する。

「建築中のある大規模複合施設において、建築確認等建築基準法に関わる法令の他に省エネルギー適合判定が必要なのですが、事前の打ち合わせが進まず計画に遅れが出始め、建築コストの上昇が懸念されていました」

 基準に適合していない場合は建築着工や建築物使用ができないが、商業施設なので開業日時は決まっている。危機的な状況に陥ったため、当初の指定確認検査機関からプロジェクトの工程について理解の深い同社へ交代依頼が来たのだ。