国内で技術を磨き
グローバルに活躍する
携帯電話の通信技術はLTE/4Gから5G、その先の6Gへと進化の速度を速めながら、ネットワークの利用は動画配信サービスや自動運転技術も含め、ますます高度化を求められている。そのため開発コストが低い新興国へR&D(研究開発)拠点を移す例も多々あるが、床次会長は「国内のものづくりにこだわる。安全保障の枠組みの中で通信技術を考えたとき、当社のような技術を持った会社は重宝される。当社は日本のDNAである匠の技によって自社開発にこだわり、競争優位を確立していきたい」と語る。
2020年代に入り、世界では予想もつかなかった出来事が立て続けに起こっている。R&Dという日本経済の成長の源を海外に出すことのリスクも明確になった。その意味でも、国内に根付いて高度な技術を磨いている同社に追い風が吹いているのは確かだ。
今年4月から東京証券取引所スタンダード市場に属した同社の業績は順調に推移している。2021中期経営計画「VISION2025」では、毎期売上・利益を10%以上成長させ続け、25年度には売上高80億円、営業利益13億円達成を目標に置いた。その先の売上高100億円も視野に入っている。そのための施策は、既存事業の強化と新規事業の創造だ。既存事業の強化では、顧客企業の価値・社会のQoL(Quality of Life)向上に重点を置いて既存事業の強みを磨き、21年に完成したT3C(滝沢テレコムテストセンター:岩手県滝沢市)を活用したテストサービス事業という新しいビジネスモデルの確立に挑んでいる。
テストサービス事業では、携帯電話基地局の性能評価業務の請負や携帯電話基地局の評価用試験機・遠隔評価環境を提供する。「大組織である当社のお客さまには、なるべく足かせになるような設備を持ちたくないという強いニーズがあります。テストサービス事業では、お客さまに代わってテスト環境の設備を用意し、請け負うことでニーズに応えます。また、この事業は(開発リソースを必要とする)プロダクトの提供ではないので横展開がしやすく、お客さまのご要望に応じて他社製品環境でのテストも可能です」と床次会長。他社製品環境下のテストが可能になれば、これまで付き合いのなかった顧客にアプローチができる。同事業は既に10億円規模の売上になっており、「将来的にはこの事業が最も大きな柱になる」と予想している。