複数の企業・店舗が加盟する「共通ポイントサービス」。消費者は共通ポイントに加盟する企業・店舗で買い物をしてポイントをため、そのポイントを全く別の企業・店舗の支払いに充てることもできるため人気が高く、ポイントプログラムの主流となっている。複数ある共通ポイントの中でも「Ponta」は独特の立ち位置で、競合にはないメリットを提携企業と生活者・消費者に提供している。
“個”を尊重する「Ponta経済圏」
「みんなで作っているプログラムです」。共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤリティ マーケティング(以下、LM)の野田和也常務執行役員は、他の共通ポイントとの違いをそう表現する。
「みんな」とは多様な業界の多岐にわたる提携企業・提携社を指す。さまざまな企業と柔軟に提携できる大きな理由は、Pontaの“誕生の秘密”にある。Ponta以外の主要共通ポイントは、自社の顧客基盤を拡張させる形で共通ポイントを運営しているが、Pontaは2010年3月、ローソンのポイントカードとゲオなどの会員組織を元に始まった。当時の会員数は2007万人で、提携企業は17社。「これらの提携企業が寄り集まってどう顧客を送客し合うかというところからスタートし、お客さまや提携社さまのご要望に応えながらサービスを構築・拡張してきました」。
常務執行役員 営業統括グループ長 兼
プロダクト統括グループ長
野田和也氏
このようなLMと提携社の関係を、「連合体として捉えている」と野田常務は言う。
「Pontaという連合体は、参加する企業それぞれの考え方や参加の姿勢、個性などを尊重し合いながら、共通の目的のために結束します。当社は、連合体全体の価値を高める取り組みを推進するとともに、各社がPontaを活用した独自の企業活動を行うサポートをしています」
LMはPonta経済圏の本部の役割を担い、各提携企業にメリットのある施策を組み立てる役割を果たしているのだ。
LMは仲間づくりにも積極的。14年に、各種ウェブサービスを展開するリクルートホールディングス(提携当時)と資本業務提携してサービスの利用先を大幅に拡充。同年、国内最大級のマイレージ会員組織であるJALマイレージバンクを運営する日本航空とも資本業務提携してマイルとポイントの直接交換サービスを開始した。
提携で強力な決済機能を備えて利便性向上
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そして19年にはKDDIと資本業務提携を発表。「共通ポイントにも通信や決済機能が求められる」という時代の流れの中で、KDDIは20年5月からau WALLET ポイントをPontaに統一し、Pontaは提携サービスに「au PAY」という強力な決済機能を持った。
「この提携はとても意義のある取り組みです。今後は新たなデータソリューションやマーケティングの展開も含めてパートナーシップ関係を強化していきたい」と野田常務。新規Ponta提携社数も増え続けており、三菱UFJ銀行やSBI証券のような金融業界にまで拡大。Pontaを「ためる・つかう」幅と深さが大きく拡張し、トランザクション(月間の利用状況)はこの2年間で約2倍に増えた。
22年6月末現在、Pontaは会員数1億816万人という国内最大級の会員基盤を持つ。22年7月1日時点で、提携社は143社、ブランド数は202ブランド、22年5月1日時点で提携店舗数は26万店を数える。
しかし、現在のLMの立ち位置は発足当初から変わっていないと野田常務は話す。
「当初はコンビニエンスストアやビデオレンタルでたまる・つかえるという、比較的リアルな店舗で活用いただくことが多かったのですが、会員数が増えるにつれてお客さまのため方・つかい方やサービスに関するご要望が多様になってきました。また、リアル店舗だけでなく金融機関のネット取引でポイントをためるというようなつかい方も増えてきた。その中で当社は、お客さまの代弁者として事業者と向き合ってサービスやプログラムを組み立てるという姿勢に徹しています」
また提携社に対しては、各社の裁量の余地を意識的に大きく残している。例えば、Pontaのキャラクター=「ポンタ」の扱い。一般にキャラクターの使用には非常に厳しい制限が課せられるが、ポンタの場合は開放している範囲が広く、提携社オリジナルのポンタがいて、さまざまなサービスシーンに登場している。
Ponta経済圏に加盟するメリットを、野田常務はこう説明する。
「当社は、Ponta経済圏の運営主体という立ち位置で、各提携社さまに寄り添い、ご要望に柔軟に対応してきました。また、顧客企業が望むマーケティングや、最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革ニーズにも柔軟に対応できるところが強みです」