サブスク・SaaS・EC事業の「成功がもたらすジレンマ」を解決する、BtoB事業に欠かせない切り札マネーフォワードケッサイ 取締役 田中 謙太朗氏

サブスクリプションサービスやSaaS、ECは、BtoCのみならず、BtoB領域でも急速に普及している。その結果、受注が好調なBtoB企業ほど大量の請求が発生し、社員が請求書の発送や未収金の督促といった業務に忙殺されるケースが増えて、現場から悲鳴が上がっている。そこで注目したいのが、請求業務の全てを外注できるサービスだ。さらに請求業務の効率化だけでなく、売り上げアップにつながるようなメリットもあるという。

コロナ禍でも業績が伸びている事業とは

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速や、コロナ禍の影響などによって、BtoB領域において、毎月請求が発生するサブスクリプションサービスや、購買をネット経由で行うEC(電子商取引)が急速に普及している。具体的には、クラウドサービスやSaaS、メーカーが自社ECサイトを立ち上げ、問屋を経由せずに、原材料や部品を低料金・短納期で直販するサービスなどが典型例である。

 最初からサブスクやECを前提としてビジネスを立ち上げるスタートアップ企業もあれば、新規事業としてサブスク・ECを始める企業もある。いずれにしても、この時流の変化は後戻りすることなく、今後ますます加速するはずだ。

サブスクやSaaS、EC事業の「成功がもたらすジレンマ」とは?

 そこで問題となるのが、請求業務である。例えばサブスクの場合、ビジネスが成功して利用者数が増えれば、月々の請求件数も膨大となり、請求書の作成・発送や、未収金のチェック、督促、回収といった請求業務も煩雑になる。

 EC事業も同様だ。問屋を経由して販売するのなら、毎月まとまった金額を問屋に請求すればよいが、一件一件のエンドユーザーに直販するとなると、請求件数は格段に増えてしまう。

「社員数が少ないスタートアップ企業や中堅・中小企業の場合、経理だけではとても処理し切れず、営業や販売など、社員総出で請求業務に対応しなければならなくなるケースも珍しくありません。督促や回収に明け暮れ、本来の業務に専念できなくなって、疲弊した社員が辞めていってしまうという最悪の事態に陥る会社もあるようです」と語るのは、BtoBデジタル請求代行サービスなどを提供するマネーフォワードケッサイ取締役の田中謙太朗氏である。

 また未収金の回収率が下がれば、損失が膨らみ、キャッシュフローも不安定となり、ビジネスそのものが立ち行かなくなってしまう。

「未収金を減らすためには、入り口の段階、つまり新規契約時に相手企業の与信審査をしっかり行うことが大切ですが、スタートアップ企業や中堅・中小企業には、そのための情報やノウハウが十分に蓄積されていないことも大きな課題です」と田中氏は語る。

 問屋経由の販売であれば、エンドユーザーの与信審査は問屋が行い、未収金が発生しても問屋が肩代わりしてくれるので、ほとんど問題はない。しかし、エンドユーザーと直接取引するとなると、自社で与信審査を行わざるを得なくなるので、審査の甘さから未収金を生むリスクも高まりやすくなる。だが、それを恐れて新規の取引先を絞り込むと、売り上げそのものが伸び悩むというジレンマを抱えてしまうのである。

 どうすればこのジレンマを解決することができるのだろうか。次ページでは未回収リスクをゼロにする画期的な方法を紹介する。