創業以来、「世界を動かすデジタル体験を」というグローバルミッションを掲げ、三つのクラウドソリューションで優れた顧客体験を提供しているアドビ。日本法人は2022年にちょうど30周年の節目を迎え、今「心、おどる、デジタル」というビジョンの下、日本の社会課題であるデジタル人材の育成に力を入れている。その詳細をアドビ日本法人・神谷知信社長に聞いた。
多くの企業から漏れ聞こえる「デジタル人材不足」という日本の社会課題
アドビは今、日本社会が直面しているデジタル課題に対して、デジタルエコノミー(デジタルテクノロジーやデータを活用した経済活動)の推進、デジタルトラスト(安全性、信頼性)の実現、デジタル人材の育成、という三つの方針で取り組むことを掲げている。その中でも、特に力を入れているのが、喫緊の課題であるデジタル人材の育成だ。
「最近、さまざまな企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)のプロジェクトを請け負うとき、必ず突き当たるのが、実際の運用にあたって“誰がやるのか?”という課題です。デジタル人材の不足は各企業にとって共通の悩みであり、近年ますますその課題が大きくなっているという実感があります」
そう語るのは、アドビ日本法人の神谷知信社長だ。
日本のデジタル競争力は64カ国中28位。中でも「人材/デジタル・技術スキル」は62位
デジタル競争力の低迷は、数字の上からも明らかになっている。IMD(国際経営開発研究所)の調査「世界デジタル競争力ランキング2021」によると、日本のデジタル競争力は64カ国中28位と低く、特に「人材/デジタル・技術スキル」が62位と、顕著に低い状況にある。
さらに社会のデジタル化の進展とともに、日本のデジタル人材はますます不足し、2030年には不足人数が最大約79万人に達するというデータもある(経済産業省「AI人材育成の取組」より)。
アドビが考えるデジタル人材とは、「アイデアを引き出し、形にする」「データを解釈し、課題を発見する」という両輪の力を発揮できる人材のこと。同社ではこれを「クリエイティブデジタルリテラシー」と名付けている。これらの能力を身に付けた人材こそが、政府が提唱する「Society 5.0」の世界で活躍できる、新しい価値を創造できる人材なのだ。重要なのは、単なるデジタルリテラシーだけでなく、“クリエイティブ”な人材であることだ。
では、どうすればそのような人材を育成することができるのだろうか。