海外に比べてDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが懸念されている日本。デジタルマーケティングの世界を先導するデロイト デジタルとアドビは、日本企業のDXの課題をどう見ているのか。また、2社のパートナーシップは、その課題に対してどんな解決策を提示するのか。デロイト デジタルとアドビでそれぞれデジタルマーケティング事業をリードする2人に話を聞いた。
日本企業の「本当のデジタル化」はこれから
コロナ禍において日本企業はDXの必要性を強く認識し、取り組んできた。しかし、特にマーケティング・セールス領域のDXにおいて、世界と比べて日本は後れを取っているのが現状だ。日本企業のデジタル化は先進的な米国などと比べて7年遅いとの声もある。
「進まないデジタル化は日本企業の低い成長性に表れています。デジタルマーケティングの先進企業がいる地点をステージ4とするなら、日本企業の多くはステージ1か2で足踏みしているという印象です」
そう語るのは、デロイト トーマツ コンサルティングのサブブランドであるデロイト デジタル執行役員の熊見成浩氏だ。デロイト デジタルでは戦略コンサルティング、エンジニアリング、クリエイティブの三つの視点で顧客のDXを支援している。
Deloitte Digital Deputy Leader 執行役員・Partner
熊見成浩氏
大手グローバルコンサルティング会社を経て、現職。約20年間のコンサルティング活動でマーケティング領域を中心に500件以上のプロジェクトを実施。コンサル×Agencyのジョイントベンチャーなど特異な経歴を持つ。近年は戦略、テクノロジー実装、クリエイティブまでを包括的なサービスとしてDeloitte Digital全体を統括。早稲田大学大学院非常勤講師(2019年度ティーチングアワード総長賞)。
企業が巻き込まれる“デジタル大渋滞”が発生中
どの企業もDXやデジタル化の必要性を認識し、多額の投資をしてデジタルマーケティングに取り組んでいる。しかし、仕組みを整えただけでは競合との差別化を実現することは難しいという。
「今は多くの企業がデジタル領域に進出し、例えばウェブサイトやアプリをつくり、SNSを運用しているため、“デジタル大渋滞”が発生しています。その結果、デジタル情報やサービスが氾濫し、ユーザーにとっての大事な情報や体験を届けられなくなっている。ですからデータを活用してサービスの付加価値を高めたり、クリエイティブをより高度化することが、次の主戦場となります」(熊見氏)
デジタルマーケティングを推進する上で、熊見氏が最も重要なキーワードとしているのは「パーパス(存在意義)」だ。デロイトが毎年発表している『Global Marketing Trends』の2022年版の中でも、パーパスは世界の経営者が重視している要素の第1位に挙げられている。
「品質や価格だけでは競合との差別化をしにくくなっている中、顧客に振り向いてもらうには、自分たちのパーパスを明確にし、顧客や従業員、パートナーなどに向けて発信しブランディングすることや、パーパスに基づいたサービス・体験提供に選択と集中していく必要があります。その実現のためには最高品質のコミュニケーションを実践することが1丁目1番地となります。しなければデジタル大渋滞に巻き込まれ、パーパスの浸透・徹底ができないのです」(熊見氏)