デジタルとリアルのハイブリッド体験を実現するために

 また、店舗などリアル接点の活用も重要なポイントとなる。日本では国土が広い米国などと違い、顧客と実際に接する場面が多い。店舗以外にも営業や販売担当とのリアルなコンタクトを生かしたビジネスを展開する企業が多いのだが、そのような企業がデジタルネイティブ企業と戦うには、リアルのアセット(資源)を駆使した戦略が必要だ。

 リアルの世界でもデジタルの技術を使いながら、リアルタイムにコミュニケーションする。そういったハイブリッドな顧客体験の提供が求められるのだ。

 例えば、ユーザーがあるショッピングモールに買い物に行く。施設内でスマートフォンアプリを立ち上げると、イベントの案内やクーポンが提示される。施設内の店舗で買い物をすると、その情報に基づいて、自分だけの他店のお薦め商品を案内される。歩き疲れた頃には、最寄りの休憩スペースと座席の空き状況が提示される……。まさに人に優しく、かつ便利なハイブリッド空間だ。

 このようなデジタルとリアルが融合したハイブリッドな世界を思い描くことはできても、いざ実装するにはハードルが高いように思える。デジタルとリアルの多様なデータを統合し、個別ユーザーごとの情報をカスタマイズし、タイムリーにコミュニケーションを取る必要があるからだ。しかし熊見氏は、「Adobe Experience Cloud」などのソリューションを使えば、このような顧客体験の構築も実は全く難しくないと語る。

 「当社はコンサルティング会社ですから、新しい世界観の構築や高度な設計図の作成をまず得意とします。そして近年では多数のエンジニアによりDX実装もEndToEnd(戦略から開発、その後のビジネス/システム伴走まで一貫した対応)で可能です。それを現実においてスピーディに、世界最高レベルで実装するには、こうした完成されたソリューションが欠かせません」(熊見氏)

 アドビのパートナー営業部執行役員本部長の長岡昌吾氏も同様の見解を示している。

「熊見さんの言うようなDXを実現するには、企業が持つ多様なチャネルのデータを統合すること以外に、さまざまな要素が必要になります。経営戦略の立案はもちろん、システムをどうするか、運用はどうするか、クリエイティブは……。これら全てを企業がインハウスで賄うのは難しいといえます。しかし、デロイト デジタルさんとアドビのパートナーシップなら、こうしたニーズに対しても一貫したサポートを行えます」

25年以上前から協業のアドビとデロイト デジタルが提案。日本企業が抱える「デジタル課題」解決へのシナリオアドビ
パートナー営業部 執行役員本部長
長岡昌吾氏

ベンチャー企業、ITメーカーを経て2014年にアドビに入社。Creative Cloudの戦略パートナーとのアライアンスを担当後に、マネージャとしてチームを率い、執行役員に就任(現職)。アドビのグローバルで、Creative Cloud、 Document Cloud、 Experience Cloudの3つの事業領域の連携強化が行われる中、グローバル初の試みとして3つの事業領域にて日本国内のパートナービジネスを統括。同時にDX第四営業本部も統括し、アドビのビジネスを包括的に推進。

2021年にデロイトが「インターナショナルでアドビのトップパートナー」に認定

 デロイトとアドビは、25年以上も前からパートナーシップを築き、協力しながら顧客のビジネスを支援してきた。1994年、コンサルティングやビジネスパートナーとして、デロイトがアドビの推奨サプライヤーとなったあたりから両社の関係がスタート。アドビの事業・企業買収をデロイトが支援したこともあった。

 12年にデロイトは、監査や税務、コンサルティングなどの機能別にバラバラになっていたウェブサイトをアドビ製品ベースで統合。「Deloitte.com」として一つにまとめたことで、デロイトブランドが一気に高まるきっかけとなった。

 デロイトはアドビ製品を顧客に提供するパートナーとしても活躍し、多数の賞も受けている。両社はお互いに、“サプライヤー” “顧客” “パートナー”というさまざまな顔で密接なコラボレーションを続けている。

 現在はデロイト デジタルを中心に、アドビ認定資格を持つ従業員も1500人を数え、全体で1万人以上がアドビ製品の提供に携わっている。21年には「DIGITAL EXPERIENCE PARTNER OF THE YEAR INTERNATIONAL」を受賞。インターナショナルでアドビの「トップパートナーに認定」されたことになる。

 またデロイトは、ガートナー社により8年連続グローバルリーダーに選出されるなど、マーケティング・セールスやカスタマー領域において多数の評価を受けている。一方アドビは、業界アナリストにより、ウェブコンテンツマネジメント、デジタルコマースなど23のカテゴリーにおいてリーダーとして選出されている。

 お互いの強み、つまりデロイト デジタルの強力なビジネスコンサルティング力と、アドビの持つ最高レベルのテクノロジーの融合が、世界最高レベルのデジタルマーケティングの提供を可能にするといえる。

25年以上前から協業のアドビとデロイト デジタルが提案。日本企業が抱える「デジタル課題」解決へのシナリオ
デロイトとアドビの25年にわたるパートナーシップ
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