技術商社機能を持つメーカーとは
このミッションを実現するためのビジョンとして中期経営計画「VISION2025」で同社が打ち出しているのが、「メーカー機能を持つ技術商社」から「技術商社機能を持つメーカー」へのシフトである。一体どういうことなのか。徳重社長はその意図をこう説明する。
「端的に言えば、ビジネスモデルと利益源泉の変革です。半導体事業とコンピューターシステム事業という従来の技術商社機能を進化させ、メーカー機能を強化してPB事業を拡大する。付加価値の高い最先端技術製品やサービスを提供していくことで、利益率を高めていくことが狙いです」(図2参照)
同社ではそのために現在、二つの施策を進めている。一つはサービスビジネスの強化だ。「セキュリティー」「AI」「クラウド」などの高成長分野において「ストック型」ビジネスを拡大することで、安定した利益基盤を構築する。
具体的には、ネットワークやデバイスを監視し、サイバー攻撃の検出や分析、対応策のアドバイスを行うTED−SOC(東京エレクトロンデバイス セキュリティーオペレーションセンター)によるサービスを提供している。
また、AIを活用したサービスとして、超高速ディープラーニングシステム販売のほか、21年7月にはAIシステムの検証環境「TED AI Lab(テッドAIラボ)」をエンジニアリングセンター内に開設。AIシステム開発支援サービスの提供を開始し、AIモデルの学習を短時間で実施していく。
収益性向上のためのもう一つの施策がメーカー機能の強化だ。
「商社であった私たちが、1985年に設計開発センターを開設したきっかけは『市場には必ずしもお客さまの要求に応える製品があるわけではない』という考えからでした。『どこも作っていないのであれば、自分たちで作ってしまおう』と考えたのです」
同社はこれまで、「メーカー機能を持つ技術商社」として半導体基板の設計・量産受託を行ってきたが、そこからさらに一歩踏み出し、自ら製品の開発製造を手掛け、商社の枠を越えて顧客の課題を解決しようとしているのだ。
プライベートブランド製品の開発では、検査や作業の自動化・省人化に注力しており、目視検査に代わり化合物半導体ウエハの欠陥の検出を可能とするマクロ検査装置「RAYSENS(レイセンス)」や、不規則形状品のピッキングや仕分けなどの人手作業を置き換えるビジョンロボットシステム「TriMath(トリマス)」などがある。22年1月までに第二種医療機器製造販売業許可を取得、同社初の開発受託製造(ODM)製品となる医療・検体検査装置の開発を進めている。