海外ネットワークと
高度な検査技術が強み
洋上風力の品質検査に関してはすでに実績もある。主な事例を紹介しよう。まず一つ目は、台湾電力の洋上風力発電プロジェクトにおける洋上風力発電設備の検査だ(実施時期19年9月~21年12月)。ベトナムで製作されたタワー本体(21基)と、韓国で製作されたタワー内部の溶接構造物(21セット)、台湾で製作された電力変換制御装置内昇圧変圧器(21基)の検査、および現地工事の技術補助者18人と通訳9人の派遣を行った。
「プラント設備・機器の調達先がグローバル化しているため、各国の製造現場での検査が必要になります。こうした要求に迅速に応えられる海外検査会社・検査員ネットワークと高度な技術を持つ検査員が当社の強みです」(今野常務)
検査員は現在、国内に約300人。その多くが大手重工メーカーの品質保証部で経験を積んだ検査のプロフェッショナルだ。加えて中国、インドネシア、インドに現地法人を持つほか、海外の検査エージェント30社以上と提携し、約3000人の検査員ネットワークを築いている。
検査員の経験値が高く、「不具合が起きそうな勘所を的確に押さえたレベルの高い検査が可能」(今野常務)という。さらに、検査員のモニタリングを定期的に行い、日頃から検査員のスキルアップに努めている。
二つ目は、洋上風力の建設を行うためのSEP船(自己昇降式作業船)用LEG(脚部)の揚地検査で、検査対象物の荷降ろし状況と外観の検査を行った(検査場所:日本、実施時期:21年7月)。その結果、不適切なラッシング(荷崩れ防止措置)と輸送時の振動による塗装の剥がれを発見した。
三つ目は、秋田洋上風力向けの海底ケーブルの製造時検査(検査場所:日本、実施時期:20年6月~21年3月)。当初は英国の洋上風力メーカーが検査を行う予定だったが、コロナ禍の影響で来日できなくなり、日本検査が請け負うことになった。長年にわたり培ってきた品質検査の知見と技術、グローバルネットワークが洋上風力の分野でも大いに生かされているのだ。
先にも触れたが、コロナ禍による移動制限で同社への検査依頼が増加している。同社検査事業部グローバル化推進室のバーニー・ブリジャー室長は「人の移動が制限され、海外の製造現場で日本からの検査員の受け入れができない状態が発生。国内メーカーは海外から製品を調達する際の検査対応が難しくなりました。そんな状況下でも当社はグローバルネットワークを活用して現地に検査員を派遣し、製造の遅延や中断を防ぐ一方、日本の検査員と同レベルの高い技術力によって製品の品質をしっかりと支えています。当社では世界各国どこでも現地検査が可能です」と語る。