新型コロナの感染拡大を抑えながら、経済を回す段階に入った日本社会。経済を活性化させるためにはインバウンドの力が欠かせない。地方の観光地の今を紹介しながら、インバウンドを国内各地に送客する羽田空港の機能強化の重要性を考える。
地域活性化に取り組む国や地方が地方創生の柱に据えた「観光」が、危機に瀕している。新型コロナ感染拡大が始まる前年、2019年の訪日外国人旅行者数は約3188万人(※1)に達し、東京五輪が開催される20年には4000万人の大台に乗ると見込んでいたが、コロナ禍により20年は約412万人、21年は約25万人に激減し、観光業は瀕死の状態に陥った。
嚴島神社(宮島観光協会)
世界遺産に登録された嚴島神社の境内。大鳥居工事は今年中に終了(予定)し、装いも新たにお目見えする(撮影・新谷孝一)
世界遺産に登録された嚴島神社の境内。大鳥居工事は今年中に終了(予定)し、装いも新たにお目見えする(撮影・新谷孝一)
嚴島神社の建造物群と背後の弥山(みせん)を含む森林区域が世界文化遺産に登録された広島県廿日市(はつかいち)市宮島町でも危機的状況は同じだ。宮島に来島する外国人観光客は、19年は約34万人だったのに対し21年は約1万人にとどまった。宮島観光協会によると、アジア系観光客の多い近隣県とは異なり、宮島では欧米系観光客が多い。「弥山へ登ったり、オフシーズンでもビーチで過ごす姿が見られました。時間をゆっくり使って潮の満ち引きを楽しんだり、嚴島神社の鳥居越しに沈む夕日をずっとご覧になっている姿を見て、そういう楽しみ方もあることに、日本人のわれわれがかえって気付かされました」。欧米系観光客の消費意欲も高く、ろくろ細工や宮島彫のような高額な木工細工を購入するなど、「コロナ前までの状況は、宮島の観光業にとってなくてはならないもの」だった。
※1 出所:日本政府観光局「訪日外客数」