羽田空港の機能強化がインバウンドを失った観光地を復活させる

羽田空港の機能強化による
国際線拡充に期待

 だが観光地は負けない。22年6月から外国人の新規入国制限が見直しされたことを受けて、観光地は誘客の準備を活発化させている。例えば金沢市観光協会では、エージェントや、運送手段、宿泊地の手配・予約を行うランドオペレーターに対しセミナーや商談会などを行い、宿泊施設や飲食店にはインバウンド対応の強化や魅力あるコンテンツの開発などの支援を行った。受け入れ体制を再整備する一方で、観光地までの移動手段の拡充にも大きな期待を寄せる。

 宮島観光協会では「羽田空港~岩国空港」ルートのPRに力を入れる計画だ。「岩国空港は広島空港よりも宮島に近く、積雪などで欠航する心配もほとんどありません。羽田空港国際線が増便され、それによって増える外国人観光客に岩国経由で来島する便利さを伝えていければ、より魅力的な観光地になれる」と期待を寄せる。金沢市観光協会でも「国内線への乗り継ぎが便利な羽田空港の国際線が増えれば、(金沢に近い)小松空港へダイレクトに来てくださる外国人観光客が増えると期待しています」と羽田空港の国際線充実に望みを懸ける。

 こうした地方の観光需要やビジネス需要の観点から、国土交通省が、20年3月より開始している、羽田空港の機能強化に期待が寄せられている。本機能強化は、一部時間帯において新しい飛行ルート(羽田新経路)を設け、国際線を増便する取り組みであるところ、大きな目的は3点、①首都圏の国際競争力の強化、②訪日外国人旅行者の受け入れ、③地域と海外の交流による地域活性化だ。都心に近く、24時間稼働する羽田空港において国際線を増便させることは、海外からの企業誘致や、投資の追い風につながり、日本の国際競争力強化に大きく貢献することが期待される(①)。また、国際線の増便は、訪日外国人の更なる受け入れを可能にする(②)とともに、地方活性化にも大きな効果が見込まれる(③)。羽田空港は国内線ネットワークの中心であり、羽田空港からの入国者にとっては日本各地へ移動する際の玄関口である。国際線の増便は、国内49空港とのつながりをより強固にするとともに、訪日外国人の地方への移動を旺盛にし、地域活性化に大きく寄与することが期待される。

 そのための重要な施策が、羽田空港の機能強化による国際線増便だ。

 羽田新経路を運用し、羽田空港を離発着する国際線を年間約3.9万回増やすことにより、国際線旅客数の受入拡大が可能となる。その結果、旅客数の増加による、航空券の売り上げやインバウンドの消費といった直接的な効果に加え、就業者の所得増などの波及効果も期待できる。

「DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(※2)」によると、第2回(20年12月調査)に引き続き第3回(21年10月調査)でも、観光旅行をしたい国・地域の中で日本は、アジア居住者を対象とした調査および欧米豪居住者を対象とした調査の双方でトップとなった。外国人観光客の訪日意欲は高い。観光立国・日本の実現に、羽田空港の国際線増便が重要な役割を果たすことが期待される。

※2 日本政策投資銀行と日本交通公社の共同調査
 
●問い合わせ先
国土交通省「羽田空港のこれから」
TEL:0570-001-596
(受付時間7:00~20:00、土日祝含む。
ナビダイヤルに接続できない場合は TEL 050-3655-5960)

この記事は2022年8月上旬の取材に基づいて掲載しています。

 

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