“繊維が短いこと”が
独自の強みになった

脱炭素社会実現の切り札、新世代のセルロースナノファイバーが誕生東亞合成 新製品開発事業部
新事業企画部
セルロースナノファイバー課
鈴木裕二課長

 もう一つの特徴が「できた繊維の短さ」だ。同研究所の後藤彰宏主査はこう話す。

「次亜塩素酸ナトリウムでセルロースを酸化すると、結晶のつなぎ目の結合が切れやすくなり、従来のCNFより繊維が短くなるのです」

 繊維が短い、というと弱点のように聞こえるが、これが思わぬ強みにつながった。

「繊維の長いCNFは、分散すると少量でゲル状になるので取り扱いが難しいのですが、繊維が短いと濃度を上げても流動性が保てるので、さまざまな素材に高濃度で配合しやすい。機能を付加させやすいのです」(後藤主査)

 同社新製品開発事業部セルロースナノファイバー課の鈴木裕二課長によれば、すでに複数の企業がアロンフィブロを活用した製品化を進めており、「ようやくバランスの良いCNFが登場した」と喜ばれているという。

「接着剤やコーティング剤などの自社製品ではCNF複合化を進めており、さらに、疎水化CNFの開発により、水系だけではなく非水系材料でも機能向上や付加価値アップにつながる研究を進めています」(鈴木課長)

 その他、脱炭素に貢献する用途としては、リチウムイオン電池への活用がある。導電性の高いカーボンナノチューブ(CNT)の分散剤としてCNFを使えば、電気抵抗が抑えられ、高寿命の充電池の開発につながる可能性があるのだ。

 現在、23年の本格的な出荷開始に向け生産体制を準備、今後の需要増加に対し万全な体制で臨む構えだ。

 今まさに本格的に立ち上がりつつあるCNF市場。CNFが当たり前のように身近に普及する未来も遠くないはずだ。

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