クラウドはDXの鍵を握るITインフラ。中堅・中小企業も、その優位性を早く享受することが成功への近道

円安による原材料価格の高騰や、インフレにより強まる景気後退懸念、コロナ禍も長引く中で、中堅・中小企業の経営は厳しい環境にある。一方で、この変化の激しい局面を好機と捉えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業績を伸ばす企業が存在するのも事実である。先行き不透明な環境で勝ち残っていくためには、デジタルやデータを活用してDXを推進することが不可欠だが、どのように進めれば良いのだろうか。中堅・中小企業のDX、IT化に詳しい2人のキーパーソンに聞いた。

企業のクラウド活用は、専門家の知識とサポートが不可欠

「中堅・中小企業は数も多く、業種や業態も多種多様です。現在の動向やDXに関する課題を共通部分で申し上げると、クラウドを活用してビジネススピードやアジリティー(変化への対応力)の向上を実現したい、またテクノロジーやデータを活用することで、ビジネスの進化・変革を目的としたDX実現の足掛かりにしたいと考えている企業がとても多いです。

 しかし、スタートラインであるクラウドの導入が思うように進まず、いまだに多くのシステム・業務がオンプレミス(自社施設内の設置)で動いているのが国内の現状だと考えています」

 日本の中小企業におけるDXの現状についてそう話すのは、NHN テコラスの白倉章照社長だ。

クラウドはDXの鍵を握るITインフラ。中堅・中小企業も、その優位性を早く享受することが成功への近道NHN テコラス
白倉章照代表取締役社長
2006年ライブドア入社。ISPや公衆無線LAN事業の企画を経て事業企画・マーケティングに従事。15年に現在のNHN テコラスに社名変更後、AWSを主としたクラウド事業を企画し統括、19年に取締役、21年に代表取締役社長に就任。

「クラウドの導入・活用が遅れている理由として、二つの課題が存在しています。ニーズが高まる一方で、具体的な計画や導入を進めるための知識や経験を持った人材が不足していることが、まず一つ目です。まさに顕在化している課題です。

 次に、クラウドの利用を開始した後には、前述のようにその価値を最大限に生かして、ビジネスのスピードやアジリティーの向上を進めていく旅、いわゆるクラウドジャーニーを推進していくフェーズに移ります。

 具体的にはクラウドを前提としたアプリケーションの開発や、アーキテクチャー(構造)の変更、運用、コストの最適化を継続的に行っていくわけですが、それに対応していくためのナレッジや人材を内製化していく必要があります。

 しかし、導入前の段階ではこのフェーズがあまり認識されていないことが多く、二つ目の潜在的な課題になりやすいポイントとなっています。当社ではこの二つの顕在・潜在課題に対するソリューションサービスを中心に事業を展開しています」(白倉社長)。

 つまり、DX実現のためにクラウドを活用していく際には「導入前」のハードルだけでなく、「導入後」もクラウドを最大限活用する取り組みを継続的に進めるためのリソース不足を認識する必要があるというのだ。

 NHN テコラスをはじめ、数多くのパートナー企業と共に、国内でクラウドサービスを展開するアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS ジャパン)の原田洋次・執行役員広域事業統括本部長も次のように続ける。

「コロナ禍をきっかけにクラウドに着手した企業も多い。しかし、全てを自社で賄うのは厳しいですし、コストもかかります。またDX人材の不足も大きな課題の一つです。特に中小企業は約90%のお客さまが専任のIT担当者を置いていないというデータもあります。ですから、いかに低コスト、簡単かつスピーディーに専門家の知識とサポートを得るかが成功の鍵といえます」

顧客のビジネス成長を、DX推進も含めて多角的に支援

 先に挙げたスムーズなDXの実現を含めたクラウド向けのマネージドサービスを提供しているのがNHN テコラスだ。同社の源流をたどると、実はライブドアに行き着く。ライブドアのポータルサイト事業などのITインフラ運営で培った知見とリソースを、法人向けデータセンター・ホスティングビジネスとして展開していた事業部門が母体となっている。

 同社は2010年にNHNグループ傘下に入り、その後資本移動や組織の統廃合などを経て、事業をITインフラ、マネージドサービスに特化。社名変更を経て、現在のNHN テコラスになった。なお、テコラスとは、テクノロジーとコーラスを組み合わせた造語で、異なる複数の技術事業を合わせて、より高い付加価値を生んでいくという決意が込められている。

「データセンターなどの物理環境に加えて、16年よりアマゾン ウェブ サービス(AWS)利用者向けマネージドサービス事業に本格参入し、クラウドの導入や物理サーバーからの移行、導入後の継続的なコスト・運用の最適化、データの活用までをトータルで支援するAWS総合支援サービス『C-Chorus』を展開しています」と白倉社長は説明する。

クラウドはDXの鍵を握るITインフラ。中堅・中小企業も、その優位性を早く享受することが成功への近道出典:NHN テコラス
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 一方のAWSについてはご存じの読者も多いだろう。アマゾンが培ってきたクラウドコンピューティング技術から生まれたサービスで、サーバーやストレージ、データベースなど、システムインフラの大幅なコスト削減や柔軟な増減を可能とし、世界中に革新をもたらしてきた。

 日本では09年からアマゾン ウェブ サービス ジャパンとしてサービスを開始。現在はスタートアップから大企業まで幅広い企業が導入している。 

 次ページからは、NHN テコラスがなぜ700社以上もある数多くのAWSパートナーの中からたった12社しか選出されない最上位の“AWS プレミアティア サービスパートナー”の認定を獲得できたのかを、同社の具体的な支援サービスとともに紹介する。