CEOが就任当日にコミットメントを発表

 こうしたリーダーシップの背景には、同社が長年取り組んできた実績の積み重ねがある。

「シティは1997年に国連環境計画・金融イニシアティブに参加して以来、25年にわたってサステナビリティへの取り組みを推進してきました。07年には、向こう10年間で気候変動対策関連プロジェクトに500億ドルを投融資する『環境ファイナンス』を開始。目標額を前倒しで達成したので、15年には向こう10年間で1000億ドル、20年には2500億ドル、21年には5000億ドルと増額を重ねています。明確な目標を掲げ、効果を科学的に検証しながら、加速度的に投融資額を増やしてきました」

 また、シティは自社だけでなく、金融業界全体の取り組みを加速させるため、さまざまな枠組み作りをリードしてきた。

 03年には、自然環境や地域社会に配慮したプロジェクトに投融資する「赤道原則」の策定に参加。14年には環境債(グリーンボンド)発行に関する自主的ガイドラインである「グリーンボンド原則」、19年には船舶融資において気候変動への影響を考慮する「ポセイドン原則」の共同策定に携わっている。

 さらに、「金融安定理事会(FSB)が設立した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)にも設立当初から参加し、18年には米国の大手銀行として初めてTCFD報告書を公表しています。具体的な開示モデルを示すことで、業界全体の情報開示の取り組みを支援してきました」と大町氏。

 サステナビリティに対する同社の思いの強さを示したのが、21年2月にジェーン・フレイザーCEOが発表した「ネットゼロに関するコミットメント」だ。

 内容は30年までに自社業務の範囲内で、50年までには投融資先を含む全体でネットゼロを実現するというものだが、CEOに就任した当日にコミットメントを発表した点に、サステナビリティで業界をリードしてきたシティの矜持(きょうじ)が感じられる。