既存事業の大幅な成長が見込めない中で、多くの企業は次の柱となるような新規事業の開発に挑戦しているが、その取り組みは失敗に終わることも多い。新規事業開発がうまくいかない理由はどこにあるのか。また、成功させるために必要なこととは一体何か。
新規事業開発のプロフェッショナルであり、自社でも優位性の高い事業を複数展開しているベルテクス・パートナーズ代表取締役の山口正智社長に聞いた。

組織・人の問題、情報の不足が失敗の要因に

 企業にとって新規事業は必要だとは分かっていても、その立ち上げは難しく、成功確率は1割以下ともいわれる。では何が成功を阻む壁となっているのだろうか。

「まずは組織の問題があります。新規事業といっても一つの事業ですから、いろいろな機能が求められます。主なところでも、調査・リサーチ、アイデア創出、事業・戦略策定、サービス開発、ファイナンス、プロジェクトマネジメントなどです。それらの機能を十分に満たすチームが必要で、どこかに欠落があると事業の立ち上げはうまくいきません」。新規事業創出やDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援、ファイナンシャルアドバイザリーなどのサービスを手掛けるベルテクス・パートナーズの山口正智社長はそう説明する。

ベルテクス・パートナーズ
山口 正智代表取締役
一橋大学卒業後、アクセンチュアに入社。複数のコンサルティングファームの経験と、大手エレクトロニクスメーカー、ゲーム会社での事業経験を通じて、2015年にベルテクス・パートナーズを設立し、現職。

新規事業で特に重要なのは、「失敗の経験」と「想い」

 情報の有無も成功を左右する要因だ。新規事業では、既存事業とは異なる市場にチャレンジしていくことが多い。これから乗り込む市場の動向や顧客ニーズを調査・分析して、正確に把握できなければ成功は望めない。もちろん調査会社などを利用すれば一定の情報を収集できるが、それはあくまでも最低限の水準だ。

「新規事業で特に重要なのは、失敗の経験です。失敗を知って予測し、事前に対応策を準備しておくことで、成功の確度を上げられます」(山口社長)

 そしてもう一つ、山口社長が成功要因として挙げているのは、個人の「想い」だ。

「新規事業開発チームを立ち上げるときに、経験に乏しい企業は、エース級の人材ではなく、無難な人材を集めてしまいます。そうなると、他部署からの理解も得られないし、配置された本人たちもモチベーションが上がらない。新規事業を成功させるには、“何が何でも成功させる”という情熱が大切なのですが、それがないまま進むことになり、失敗する可能性が高くなります」

 次ページからは、新規事業をどのように成功させればいいのか。解決策を語ってもらう。