国産半導体の世界シェアは1988年の50.3%をピークに低下を続け、2030年には0%に近づくという。しかし半導体産業が斜陽なのは日本だけ。世界では成長産業であり、高性能な半導体はSociety 5.0の実現に不可欠だ。米国半導体メモリ大手のマイクロンは、6月に行われたテレビの取材で、上級副社長が年内にも広島工場で1βと呼ばれる最新テクノロジーのDRAM製品を量産化する意向であると述べた。半導体の役割、国内生産の意義について、半導体技術の専門家である東京大学の黒田忠広教授と広島大学の寺本章伸教授に聞いた。

 世界の半導体市場はこの30年間、急成長しており、2020年に50兆円、30年には100兆円に達すると予測されている。

高度な技術を用いた広島産半導体が、Society 5.0を実現東京大学大学院工学系研究科
黒田忠広教授 1982年東京大学工学部電気工学科卒業。工学博士。同年東芝入社。2000年に慶應義塾大学に移り02年より教授。19年東京大学教授。d.labセンター長。RaaS理事長。

 日本は成長の波に乗り遅れたものの、「挽回のチャンスはまだある」と、東京大学の黒田忠広教授は第4波に期待を懸ける。

 第1波は物理的空間を快適にした「家電」、第2波は仮想空間を生み出した「パソコン」、第3波は仮想空間が持ち歩ける「スマートフォン」。そして「第4波は自動運転、ロボティクス、仮想空間が進化したメタバースと、いろいろいわれていますが、本質的な整理をすると、物理空間と仮想空間が高度に融合したデータ駆動型社会です。この波の到来に備えて、いよいよ国は投資の覚悟を決めた。なぜなら半導体の役割が、産業のコメから社会インフラに変わったからです」。

 第4波の到来に備え、日本では二つの挑戦が始まっている。半導体開発プロセスの見直しと、マイクロン(米国メモリー大手のマイクロン・テクノロジー)による最新半導体の量産体制構築だ。

※出所:経済産業省「第1回半導体・デジタル産業戦略検討会議」資料