日本企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む上でボトルネックとなっているのがデジタル人材の不足だ。その解決策として注目されているのが「リスキリング(学び直し)」である。世界で共通のクリエイティブツールを提供しているアドビはリスキリングに力を入れ、日本企業のDXを支援している。その取り組み内容について、アドビ日本法人の神谷知信社長に聞いた。
日本のデジタル競争力は年々低下、63カ国・地域の中で29位に
日本のデジタル競争力の低下が懸念されている。スイスのIMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2022」によると、日本のデジタル競争力は63カ国・地域中29位で過去最低となった。18年の22位から毎年順位を落としている状況だ。8位の韓国、11位の台湾、17位の中国などと比べても、日本の評価は著しく低い。要素ごとのランキングの中でも、特に「人材」は18年36位→20年46位→22年50位と低下の一途をたどっている。
アドビ日本法人の神谷知信社長は「コロナ禍を機に、DXを推し進め、デジタル競争力を高めた国・地域もある中で、日本は残念ながら後れを取りました。その大きな原因はデジタル人材不足です。日本のどのお客さまとお話ししても、共通の悩みとしてデジタル人材不足を抱えています」と語る。
企業内でDXのプロジェクトが立ち上がっても、それを実際に運用できる人材がいないため、プロジェクトが止まってしまう。また、プロジェクトを外注に頼れば、DX時代に求められる機敏性や柔軟性が犠牲になる。こうした状況を打開するためにも、デジタル人材の確保・育成は企業にとって喫緊の課題となっている。
そもそもアドビの考えるデジタル人材とはどのようなものだろうか。 ウェブサイト構築やアクセス解析などのデジタルマーケティングツールや、動画編集などのクリエイティブツールを幅広く提供している同社では、「データを解釈し、課題を発見する能力」と「課題に対してアイデアを引き出し、形にする能力」を兼ね備えた「クリエイティブ デジタル リテラシー」を持つ人材が、DXをけん引していく上で重要だと考えている。
では、どうすればそのような能力を備えたデジタル人材を確保することができるのだろうか。次ページではその課題を解決する鍵を提示する。