独学でも可能。YouTubeやコミュニティーで動画編集の技を獲得

 またYouTubeで運営するAdobe Creative Stationでは、「Creative Cloud入門」「Adobe Premiere Pro初心者向け集中講座」など、初心者向けのノウハウ動画を増やしている。無料で見られるこれらの動画により、独学で動画の編集や簡単なイラストを動かしたりできるようになったという声も多いという。

 各アプリケーションのユーザー会も頼もしい存在だ。例えばマーケティング・オートメーション・ツールの「Adobe Marketo Engage」のユーザー会には、多くの企業のマーケティング担当者が参加。全国どこかしらで、毎月のように会合が開かれている。こういったコミュニティーを活性化させ、学びの機会を増やすための後方支援にアドビは取り組んでおり、またMarketo Engageに限らず、各アプリケーションでユーザー会やコミュニティーイベントがある。

 さらに情報発信ではアドビ認定エバンジェリストが複数いるため、フォローしておくと、初心者から上級者までそれぞれに合わせた有益な情報が得られるという仕組みだ。

 また初心者にとっては、ユーザー同士が情報交換するコミュニティーの存在も大きい。そこでアドビでは、独自のSNS「Behance」の普及に力を入れている。Behanceでは、世界中のクリエイターが、自分の作った作品やその制作過程動画を公開している。アドビユーザーはBehanceを通じて、トップクリエイターの技を学び、コミュニケーションができるのはもちろん、そこから仕事の依頼につながることもあるという。

企業の「デジタル人材不足」を解決する切り札。リスキリングを進め、会社を成長させる一手アドビが力を入れている「Behance」では、世界中のクリエイターが作品を公開している

リスキリングは全年代で、ノンデジタルの人材にも効果がある

 アドビは、「Adobe Creative Cloud」を使いこなすスキルを証明する「アドビ認定プロフェッショナル」などの資格制度の普及にも、長年にわたり力を入れてきた。アドビが公認する国際認定資格なので、合格すれば海外でも Adobe Creative Cloudを活用するスキルがあることを証明できる。アドビはオンライン講座を提供している企業と連携して資格取得を促進しており、受講者は年々増えているという。

 このような学ぶ機会を利用してリスキリングすることで、ビジネスパーソンは、顧客体験向上につながるデジタルツールという“武器”を身に付けられる。そして企業は、すでにいる人材に対して、成長の機会を提供できる。これはノンデジタルな人材にとっても大きなチャンスといえる。

「コロナ禍で来店客が大幅に減った家電量販店チェーンで、リアルな接客を中心に活躍していた社員に対してリスキリングをさせた例があります。その結果、現場を知り、商品の特性をよく知る社員が商品の動画を自分で作成したり、ネットでの接客を積極的にしたりと、デジタルマーケティング人材として活躍できるようになりました。このようにしてDXの内製化を進めることもできるのです」(神谷社長)

 例えばSNSに投稿するビジュアルを「Adobe Express」で作成する。あるいは短い動画を「Adobe Premiere Pro」で編集してTikTokにアップする。自社のウェブサイトを「Adobe Analytics」で解析する。外部に発注するモバイルアプリのプロトタイプを「Adobe XD」で作る……というように、ちょっとした作業を内製化することもDXの一種だ。各業務の課題に応じて、必要なアプリケーションを組み合わせながら活用できる。前述したように、全くの初心者でも、使い方の動画も含め多くの無料教材で学ぶことができる。

「デジタルに親しんでいる若い人たちの創造力や企画力を生かす場をつくることが、DXの始まりであり、経営層の大きな役割と考えています。リスキリングによって若者が活躍する場をぜひつくってほしい。もちろん若い人だけでなく、経験豊富なビジネスパーソンにも、リスキリングによって成長のきっかけをつかんでほしいと思います」と神谷社長は語る。

 自社や自分の部署の業務、商材の特徴を知っている従業員が、内製化でデジタルツールを使いこなせれば、成長は加速できるはずだ。経済産業省の「DXレポート2」では、「DXを推進するために必要となる人材については企業が自ら確保するべきである」と指摘している。DX人材内製化の初めの一歩として、リスキリングは有効な手段といえそうだ。

●問い合わせ先
アドビ株式会社
URL:https://www.adobe.com/jp/