日本の会計基準では知的財産(特許)のほとんどはBS上に計上されない。しかし帳簿に表れない「見えない資産」こそが、企業の価値であり売り上げを伸ばす武器となる。知財戦略に強い正林国際特許商標事務所の正林真之所長は、その仕組みを「知本主義」と呼ぶ。

正林国際特許商標事務所
正林真之
所長(弁理士)

 一般的に「持たない経営」を行っている業種は、BS(貸借対照表)に対してPL(損益計算書)の方がかなり大きく、少ない財産で大きな売り上げを上げている。例えば、マイクロソフトやグーグル、アマゾンなどの企業は、基本的に工場などの固有資産を所有しない「持たない経営」を行っているため、BSに対してPLが大きくなっている。

「ただし彼らは、その小さなBSには表れていない資産を持っています。それが知的財産というもの。つまり知的財産をコアコンピタンス(競争力の源泉)として経営している会社は、数字には表れない『見えない資産』をたくさん持っている。特許などの権利を取るのは、自らを守るためだけではありません。知的財産というのは、自らのアイデアをマネタイズする道具として、攻めにも使うことのできる、極めて有用なものなのです」

 そう語るのは、積極的な知財戦略で知られる正林国際特許商標事務所の正林真之所長だ。

 製造業の場合、一般的にPLはBSの1.2~1.5倍規模で、不動産賃貸業などはBSの方が著しく大きく、PLがBSの10分の1以下のケースもある。一方、持たざる経営を行っている企業は、BS上で資産計上されない「見えない資産」の割合が大きい。成功している組織の多くは、権利取得による知的財産の活用がある。帳簿に表れない知的財産を活用して、BS上の少ない資産で大きな売り上げを上げているのだ。