ITやEV、航空宇宙
先端技術を化学で可能に
新たに掲げるブランドタグラインは「Transform Tomorrow Today」(今日、明日を変える)。
変わったのは社名だけではない。3本柱だった化学・セメント・機械のうち、機械事業は既に100%子会社として経営体制を敷いていたが、さらにセメント事業を三菱マテリアルとの折半出資であるUBE三菱セメントへ移管することで、UBEは化学事業を主軸とするメーカーへと変化したのだ。
19年に経営トップとなり、この“進化”を主導してきた泉原雅人社長は、「構造や環境が異なる化学、セメント、機械という各事業が各自でベストな運営を行えるよう事業形態の最適化を追求してきた結果、誕生したのがUBEです」と明かす。化学に特化する形となったUBE本体も、これで変化が一段落するわけではない。国内外の化学事業には大きく分けて、価格競争の激しいベーシック化学分野と、開発・生産に高度な技術が不可欠なスペシャリティ化学分野という2種類の事業がある。このうちUBEが特に強化に取り組んでいるのは、次に泉原社長が挙げるような高付加価値製品を生み出すスペシャリティ化学分野だ。
「液晶や有機ELのベースフィルムやEV(電気自動車)・HV(ハイブリッド車)のリチウムイオン電池用セパレータ、自動車・航空宇宙分野のエンジン関連の耐熱繊維、エコタイヤ用の合成ゴムといった先端分野の素材に当社は強みを持っています。また、医薬品の原料となる原体・中間体も伸びています」
ベーシック化学分野で築いた確たる地位を維持しつつ、「エネルギー負荷の低い」「市況変動に左右されにくい」「収益性の高い」スペシャリティ化学分野を主体とする事業構造へのシフトをさらに進める──UBEはさらに進化を続ける方針を明示している。
「何でもやらせて
くれる会社」を実感
UBE誕生までの1世紀を優に超える歴史は企業の大きな変化の歴史なのだが、これを支えてきたのは、変革を可能にする技術と、変化をいとわず、むしろ進んで変化を求める人材だ。
「社会に対して、あるいは人に対して、誠実に対応していくという、モノづくり企業らしい真面目な人材が多い会社である一方、新しいものを生み出して社会を変えること、自分たちが変わって新しいものを生み出すことで成長してきた会社でもあります。まずは任せてみる文化、ものが言える文化があるのはそのためでしょうね」と言う泉原社長は、自らの体験も織り込みつつ振り返る。
「私自身、入社以来、人事から経理、海外(米国)駐在、事業部、広報などさまざまな経験を経て『何でもやらせてくれる会社だ』と思ってきましたし、研究開発でも新規事業でも、新しいことをやろうとする人たちが声を上げ、胸を張って仕事のできる会社です」
そして、UBEのタグラインについて次のように語る。
「『Transform Tomorrow Today』を実現させるためには、当社で働く人たち全てが『Transform(変革)』する力を持つことが鍵になります。人材の採用や育成において今、多様性やリスキリングの強化に本気で取り組んでいるのは、『自分の成長が会社の成長につながる』『自分の変革が会社の変革につながる』会社であり続けるためです」