グローバル・メディア・スタディーズ学部でグローバル企業の経営戦略を教える各務洋子学長は、今仏教や禅は世界のビジネスパーソンに関心を持たれていると指摘する。
「グーグルやインテルなどシリコンバレーの名だたる企業が、禅を発祥とするマインドフルネスを採用したのも、その有効性を感じているから。“目的を持たずに坐る”ことで、創造的なマインドも醸成されるかもしれません。もともとビジネスはロジックで構築されていますが、これだけ世界が混沌としてくるとロジックだけでは対応できません。こんな時代だからこそ、エモーショナルなインテリジェンスともいえる禅の思想が求められるのだと思います」
グローバルに事業を展開する川口社長も、各務学長の考えに同意する。
「これまで経営の考え方は、西洋の理論に偏っていました。でも各務学長がおっしゃるように、現代のような混沌とした世界で正解を出していくには、長期的な視点で多様性を重んじる仏教や禅の考え方が必要だと思います。例えば、『般若心経』には“照見五蘊皆空(しょうけんごうんかいくう)”という言葉があります。私はこの“照見”という言葉に感銘を受けました。人の上に立つ経営者は、全ての物事を注意深く観察する必要がありますが、単なる観察ではなく、温かみと包容力を持って多様な人々を“照らし見る”必要がある。私独自の解釈なのですが、『般若心経』にはそんなことも教えられます」
駒澤大学には「仏教と人間」という1年生必修の講義があり、坐禅の授業もある。そこで学ぶ「智慧(ちえ)」と「慈悲」の精神は、社会に出てからの心の“素養”となる。