「Way to ZERO」を提唱しカーボンニュートラル企業へ。持続可能なモビリティーを実現する電動化・脱炭素戦略と、新型EV

フォルクスワーゲンは、持続可能な社会の実現へ向けてCO2排出ゼロの自動車をより多くの人々に届けるための包括的取り組みを象徴するコンセプト”Way to ZERO”を提唱。2050年までにカーボンニュートラルな企業になることを目指す。加速する同社の電動化・脱炭素戦略と、満を持して日本に上陸した電気自動車「ID.4」を紹介する。(文・数藤 健 写真・望月浩彦、Volkswagen AG)

 フォルクスワーゲンの「Way to ZERO」=脱炭素化へのロードマップは大きく二つ。長期的には、2050年までに実質的にカーボンニュートラルな企業になること。そして30年までの目標は、18年と比較して欧州で生産される車両1台当たりのCO2排出量を40%削減することだ。これは、車両がそのライフサイクルを通じて排出するCO2を平均で17トン削減することを意味する。

「Way to ZERO」を提唱しカーボンニュートラル企業へ。持続可能なモビリティーを実現する電動化・脱炭素戦略と、新型EV"Way to ZERO"の概念図。自動車の電動化だけでなくライフサイクル全体の脱炭素化を見据え、多様な施策を実行している
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 ちなみに同社は、30年までに電気自動車(EV※1)の販売台数の割合を、欧州で少なくとも70%に、北米と中国で50%以上に増やすことを目指している。また、33年から35年の間に、欧州市場向けの内燃機関(ICE)車の生産を終了する。

 同社の脱炭素化に向けたアプローチは多岐にわたり、車両の電動化だけでなくライフサイクル全体の脱炭素化を見据えて以下の四つの対策を実行している。①モデルラインアップの電動化を継続的に加速 ②生産拠点・サプライチェーンの脱炭素化 ③グリーンエネルギー、再生可能エネルギーの活用 ④バッテリーのリサイクル・再活用だ。

 例えば、①電動化加速。欧州では19年発表のID・3以降、毎年新型EVを発売しており、26年までに10車種を導入予定だ。

 サプライチェーンと生産関連はEVのCO2排出量の半分を占める。よって②では、15年と比較して、25年までに車両1台当たりの生産におけるCO2排出量を50%以上削減するという目標を設定した。なお、自動車を生産する同社の工場の大半はすでに再生可能エネルギー源からの電力を使用している。

「Way to ZERO」を提唱しカーボンニュートラル企業へ。持続可能なモビリティーを実現する電動化・脱炭素戦略と、新型EVID.シリーズ4モデル。手前から5ドアハッチバック「ID.3」、SUV「ID.4」、SUVクーペ「ID.5」。一番奥は2022年発売のミニバン&カーゴ・ブランドアイコン「ID.BUZZ」

 

「Way to ZERO」を提唱しカーボンニュートラル企業へ。持続可能なモビリティーを実現する電動化・脱炭素戦略と、新型EVドイツ本国ではリチウム、ニッケル、マンガンなどのバッテリー原材料の複数回リサイクルに着手。また、電力供給会社を設立し、風力・太陽光発電所の建設も進めている

 また、現時点でサプライチェーンや生産において回避も削減もできないCO2排出は、グリーンエネルギーの生成などの環境保護プロジェクトへの投資によって相殺している。よって同社は、ID・3/ID・4/ID・5を欧州の顧客にはカーボンニュートラルで届けている。

 実績は積み上がっている。フォルクスワーゲンは21年に全世界で26万3000台のEVを販売した。これは、対前年比97%増の成長。部品の供給が滞る厳しい状況にあるにもかかわらず、ID・ファミリーの販売開始からすでに50万台を販売した。予定よりも1年早く達成している(データは全て同社調べ)。