脱炭素化プロジェクトに取り組む木材建材事業本部のスタッフ。左から3番目が住友林業 細谷洋一執行役員 木材建材事業本部副本部長。本社内の「きこりんプラザ」にて

世界のCO2排出量の3分の1以上は建設分野によるもの。この分野の脱炭素化は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて重要な鍵を握る。
住友林業は、建物のライフサイクルにおけるCO2排出量を算定できるソフトを提供し、CO2排出量の「見える化」と削減を支援することで、脱炭素社会の実現に貢献している。

 創業した、1691年以来、330年余りの歴史を持つ住友林業。今日のようにサステナビリティの重要性が叫ばれるはるか以前から、持続可能な森林資源を生かす事業を展開してきた。

 2022年2月には、脱炭素社会の実現に向けた長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を策定。その中で「ウッドサイクルを回して脱炭素に貢献する」という方針を掲げている。

「『ウッドサイクル』とは、森林経営から木材加工・流通、木造建築、バイオマス発電まで、住友林業グループが提供する『木』を軸としたバリューチェーンです。このサイクルを回すことで、自社のみならず、社会全体のCO2吸収や炭素固定を促し、脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています」

 そう語るのは、同社木材建材事業本部副本部長の細谷洋一執行役員である。

 具体的な取り組みとして、同社は「森林」「木材」「建築」の三つの分野における脱炭素事業を推進している。ウッドサイクルの出発点である「森林」については、保有・管理する森林の面積を30年までに50万ヘクタールまで拡大する計画だ。「新たなCO2吸収源などの付加価値を持つ森林資産の確保を目的とした森林ファンドを設立し、その運用資金を使って24年までに120億円を投資します。運用資産規模は30年に1000億円を目指しています」(細谷執行役員)。

 他社との協業で人工衛星やドローンを活用し高精度・高効率の森林経営を行い、質の高いカーボンクレジットの創出にも取り組んでいく。

「木材」については、国産材の利用拡大を促すため、24年までに200億円を投資して木材加工工場やバイオマス発電所などを集約した木材コンビナートの整備を推進。これによって、30年の国産材使用量を年間100万立方mまで増やすことを目指している。