「建てること」によるCO2排出の削減に貢献

「国産材の利用が広がれば、間伐や植林といった森の新陳代謝が促され、国土保全に資するだけでなく、木の若返りによってCO2の吸収力も高まります。また、木材は伐採しても炭素を固定し続けます。そのため長期にわたり建物に木材を使用し続けることはカーボンニュートラルに貢献します」と細谷執行役員。

 この利点を最大化するため住友林業は「建築」における脱炭素事業として、脱炭素設計のスタンダード化に取り組む方針だ。

メルボルンにて建設中の15階建て木造オフィスビル(完成イメージ)

 具体的に国内では、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)やZEB(ネットゼロエネルギービル)、LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅※1、ネットゼロカーボンビルの普及と脱炭素設計手法の確立を目指す。LCCM住宅を22年4月に発売し、10月にモデルハウスをオープンした。ネットゼロカーボンの木造中高層オフィスビルは、現在メルボルン(写真左)とロンドンで建設中だ。

 もう一つ、住友林業が脱炭素設計を推進する上で重要なのが、エンボディードカーボンの削減である。

 エンボディードカーボンとは、原材料の調達から加工(製造)輸送、建設、解体など、「建てるとき」に排出されるCO2のこと。「世界のCO2排出量の実に37%は建設分野。そのうち約70%は暮らすときに排出されるオペレーショナルカーボンで30%がエンボディードカーボンです。前者はZEHやZEBの普及などで削減が日本では進んでいますが、エンボディードカーボンの削減が遅れています。住友林業はその促進のため、建てるときのCO2排出量の『見える化』と削減を支援する取り組みを行っています」(細谷執行役員)。