150分の作業時間を削減。現場も歓迎し、導入がスムーズに進行中

 遠隔監視については、工場で使うユーティリティー(電気、水道、ガス<蒸気>)が「見える化」され、しかも遠隔監視ができるようになった。

「今までは工場内に設置されたモニター画面まで見に行って確認していたのですが、IoT導入後はネットを介してどこにいても見られるようになりました」

 さらに、広大な工場内を点検して回る作業が軽減されたことも現場に歓迎されていると熊谷課長は話す。

「異常が発生するとメールで通知されるので、異常箇所を特定してすぐに対処することができます。今まで点検にかけていた約150分の作業時間(1日当たり)が削減されました」

 異常・修繕履歴によるコンディションベースの設備保全により、工場の安定稼働と修繕コストの抑制につなげていきたいという。

戦略的な活動時間をつくるKPIデータの収集とグラフの自動作成

 そして製造の主要KPI(重要業績評価指標)データの収集および作成は、現場のキーパーソンや管理職に好評だという。

「以前は、稼働率や歩留まりなどのKPIデータを人手で集めて、Excelに情報を入力し、人手でグラフを作って管理職に提出し、分析して、『ここを改善しましょう』という手順が必要でした。これこそ属人化した業務で、集計にも時間がかかっていました。IoT化によって設備から自動でデータを取り、計算ロジックに従って自動計算してグラフ化し、ある程度の簡易的な分析ができるようになりました。多いときで40分ほどもかかっていた集計作業が即座に終わり、必要なアクションがすぐに起こせるようになりました。その結果、現場のキーパーソンや管理職は、より戦略的な活動に時間を使うことができるようになったのです」

 現時点では6工場のIoT化に着手した段階だが、数年後には全工場のIoT化を実現し、同時並行して作業を効率化する機能の付加やデータの有効活用の仕組みを構築していく計画だ。しかし、熊谷課長はもっと先を見据えている。

“育ち”がまったく違う17工場を、標準化・効率化するDXとは? コカ・コーラ ボトラーズジャパンが取り組む巨大プロジェクトコカ・コーラ ボトラーズジャパン SCM本部 製造統括部
製造企画部 製造DX推進課
熊谷直仁課長

「今はデジタルインフラを整備している段階だと私は思っています。そのデジタルインフラの上にちょっとした自動化の機能を付加して、製造現場の作業効率化を進めています。将来は17工場と本社をネットワークでつなぎ、経営層が現場のデータをリアルタイムで取ったり、AI分析にかけたり、物流や販売などの他部門とのデータと連携させたりすることもアイデアとしてはあります。会社全体の業務効率化を実現したいです」(熊谷課長)

 CCBJIのSCM部門では、製造のDXを最重要項目(同社では「ブラックベルト」と呼ぶ)の一つであり、重要なOE(オペレーショナルエクセレンス<現場の業務遂行力の最適化>)活動と位置付けている。製造現場のDXは緒に就いたばかりだが、熊谷課長のチームが挑むCCBJIのDXは、大きな変革に向けて着実に歩みを進めている。

●問い合わせ先
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
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