マニュアルのデジタル化で
全従業員に統一的な教育を提供

 小売業界でデジタル化を進めようとするとき、多くの企業で問題となるのが端末不足である。吉岡室長は「いきなり増やそうとするのではなく、まずは手元にあるもので視聴できるようにした」と語る。発注に使用するWindowsタブレットが、多い店舗では10台程度がすでに装備されていたため、それを利用することを考えたのだ。その後、別の業務で利用するためのiPadなどの導入も進み、環境が整備された。いずれは「個々人のスマートフォンで見られるようになるのが目標」(吉岡室長)とのことだ。

 スーパーマーケットの業務は多岐にわたるため、必要なマニュアルを探すのに手間がかかる。また「魚をおろす」など、動きで確認した方が分かりやすいものも多い。Teachme Bizの導入により、20年度には入社してから一定のレベルに達するまでに必要な各部門の業務が、分かりやすい動画や画像のマニュアルでいつでも閲覧できる状態となった。    

トレーニング機能の導入で
自主的な活用を促進

 コロナ禍の影響で、対面での研修が難しいことも追い風となり、Teachme Bizのマニュアル閲覧数は大きく増え、月に5000回以上も見られる水準まで伸びた。

 しかしながら、視聴指示のあるマニュアルに閲覧が集中するなど、細かく調べてみるとコンテンツごとの閲覧数に差があり、従業員がいつも自主的に活用しているとはいえない状況だった。また部署ごとの活用の格差もあったという。

 この課題の解決につながったのが、光洋のOJT・資格検定ツールである「マルチラーニング」のデジタル化である。「当時Teachme Bizに追加されたトレーニング機能がこのマルチラーニングと非常に相性が良かった」(吉岡室長)ことも大きい。トレーニング機能は特定の個人にマニュアルをベースとして設定し、視聴履歴の確認や進捗管理ができる機能だ。

 もともと冊子の形で存在していた「マルチラーニング」は、部門ごとに6つのステージがあり、各ステージで習得しなければならない要件が体系的にまとめられたものだ。例えばステージ1では「お客さま対応ができる」「経営理念を理解している」などの基本項目が設定されており、それぞれ参照すべきマニュアルも併記されている。

 全ての項目の学習を修了すると次のステージに上がることができる。上のステージでは、「値付け作業ができる」「アジの三枚おろしができる」などといった、より専門的な項目が設定されている。

 ステージ4までは、正社員もパートタイム社員も同じように昇格していくのが特徴で「立場に関係なく、同じ業務ができれば同じ評価がされる」ということが明確になっている。「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」をされたのも、「この公平な仕組みが評価されたのだと思う」と吉岡室長が話す通り、従業員のモチベーション向上につながるシステムだ。    

 冊子で運用していたときは、各コースを修了すると上司の印鑑をもらい、本社に郵送していた。これをデジタル化することで、受講者は自分に配信されたコースをパソコンやタブレットなどの端末で、設定された修了期限までに受講して修了を自己申告できるようになった。

 既にデジタル化されているマニュアルともリンクしているので、別の冊子を探す手間も省ける。上司や本社などの管理者側も、リアルタイムで進捗状況を確認できるようになった。

 成果はマニュアルの閲覧数増加に表れており、以前は最大で月間6000回程度だった閲覧回数が、平時でも1万回以上、最大約2万5000回まで伸びた。