年間130万円の印刷コストがゼロに!
生産性も向上し、今後の課題も明確になる

 マニュアルをデジタル化した成果として、分かりやすいのは印刷コストの削減だ。光洋では年間130万円かかっていた印刷コストがゼロになった。また冊子に押印したり、郵送したりといった業務の廃止により、年間で1040人時の時間短縮、隠れコストとして見落としがちなマニュアルを探す時間は、少なく見積もって1回につき1分だと計算しても、年間でマイナス1000人時の削減効果となる。

現場の生産性向上へ。小売業におけるマニュアル活用の方法とは

 吉岡室長は「コロナ禍の影響などもあり、Teachme Bizによる成果だけではないが」としながら、21年度は導入前の17年度に比べて売上高が0.5%、営業利益が2.4%、人時生産性が10%向上し、人件費は0.2%削減されたという。

 マルチラーニングやコロナ禍での情報伝達手段として、Teachme Bizが従業員個々にとって身近なものになり、活用の幅が広がったことも成果として挙げられる。人事や商品など、教育訓練以外の部署でもさまざまなマニュアルを作って配信するようになったのだ。マニュアルや研修動画だけでなく、POPや売り場づくりのヒント、商品に関する豆知識といった、ユーモアのある動画も意図せず広がった。

 さまざまな情報を、店舗で働くアルバイト社員にまで届けられるようになり、従業員からも好評だ。「マニュアルを探す手間がなくなった」「昇格試験の前に動画で復習できる」「上司によって教え方が違うということがなくなった」「誰がどこまで修了しているのか一目瞭然」「ちょっとしたコツなどの動画も増えて面白い」など、従業員から評価する声が上がっている。

 一方で吉岡室長が課題としたのが、当初の目的である修了・昇格率の向上である。これに関しては、Teachme Bizの導入前後で変動がなかったという。要因の一つとして「上司がどこまで部下を引き上げようとするか」によって、店舗間で格差があることが考えられる。

 デジタル化しても、「現場では上司が指導するものである」こと、「自主学習は大切だが、最終的には上司からの確認と指導は必要である」ことに変わりはない。従って、店長の指導が行き届いている店舗では、従業員全員の修了率が高くなる。

 この格差を改善する手段について、吉岡室長は「Teachme Bizに加わったデータ出力機能(β版)が非常に便利」だと語る。これまではTeachme Bizの画面内で店舗ごとの成果を確認していた。今後は出力したデータをBIツールなどに取り込み、全社規模でも可視化する。横並びで比較することで、店舗間の格差をなくそうという考えだ。

 これほど多方面にTeachme Bizを活用し、生産性向上も実現している同社でも「もっといろいろ活用できると考えている」(吉岡室長)と、アイデアを披露した。例えば、商品知識をパートタイム社員やアルバイト社員にまで伝えることで、誰でも同じように「良い売り場」づくりができるようにしていきたいという。従業員がスキルアップのモチベーションを持つ仕組みを構築することが、売り場を訪れる顧客の満足度向上につながっていくはずだ。

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