「省・小・精」の精神と技術で環境課題を解決。エプソン流サステナビリティ経営の現在地セイコーエプソンは美しい諏訪湖畔に、1942年、時計部品の製造から創業した。「絶対に諏訪湖を汚してはならない」「地域に受け入れられる工場になる」という創業者・山崎久夫氏の強い想いを引き継ぎ、地域との共生、環境との調和が社風として定着している。

 2021年に改定した「環境ビジョン2050」では、2050年時点の「カーボンマイナス」と「地下資源(原油、金属などの枯渇性資源)消費ゼロ」の達成を宣言。22年9月にはパーパス「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」を発表し、「省・小・精の技術」で、従業員、顧客、パートナーを含む社会全体および環境に貢献する意志を、内外に示した。エプソンの目指す本丸は、卓越した技術を活用することで実現する社会貢献であり、そのためのサステナビリティ経営なのだ。

「省・小・精」の精神と技術で環境課題を解決。エプソン流サステナビリティ経営の現在地小川恭範セイコーエプソン 代表取締役社長/CEO
東北大学大学院工学研究科卒業後、セイコーエプソンに入社。技術者として同社初のビジネスプロジェクターを手がける。2020年にセイコーエプソン 代表取締役社長/CEOに就任。

 ではそれらの目標を達成するために、セイコーエプソン 代表取締役社長/CEO 小川恭範氏(以下、小川氏)は、どのような具体的なアクションを起こしているのだろうか。

「もちろん、カーボンマイナスや地下資源消費ゼロという目標を、簡単に実現できると考えてはいません。しかしエプソンにはもともと、高い目標を掲げ、継続的に環境活動を行って結果に結びつけてきた企業風土があります」

 創業と同時に始まった環境への取り組みの中でも特筆すべきは、世界に先駆け1988年に宣言し、1993年に実現にいたった「フロン全廃」への取り組みだろう。こうしたチャレンジングな目標を、あきらめずに続けて成功に結びつけた実績が、同社にはある。

「そのうえで現在、『脱炭素』『資源循環』『お客様のもとでの環境負荷低減』『環境技術開発』の4つのテーマで、取り組みを進めています。そのうち『脱炭素』『資源循環』『環境技術開発』には、2021年から2030年までに1,000億円の費用を投下し、サプライチェーンで発生する温室効果ガス排出量を200万トン以上削減していく予定です。

 また、経営資源のほとんどを環境負荷低減に貢献する商品やサービスの開発に集中させ、社会の環境負荷低減に貢献していきます」

技術開発で実現する環境課題ソリューション

『脱炭素』では、設備の省エネからはじまり、温室効果ガス除去、サプライヤーエンゲージメント、脱炭素ロジスティクスの活用、資源循環などに目を配り、複合的にCO2を削減していくという。