3月8日は「国際女性デー」。ジェンダー平等について考える日であり、徐々に認知が広がっている。しかし、世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数で、日本の総合順位は146カ国中116位。特に経済分野では121位であり、日本企業の喫緊の課題といえるだろう。性別の違いのみにとらわれず、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン:多様性、公平性、包括性)に取り組むメルク・ベトナムの池田秀子(いけだ・ひでこ)社長に、多様な人材の活躍推進のためのヒントを聞いた。
女性活躍が一般的なベトナム、リーダーの女性比率も高い
ドイツに本社を置くメルクは、ヘルスケア、ライフサイエンス、エレクトロニクスの三つのビジネスを世界規模で展開している、サイエンスとテクノロジーのグローバル企業である。メルクバイオファーマは、ヘルスケアビジネスの日本法人として医薬品や医療機器の製造販売を中心に展開。2007年にビジネスをスタートし、特にがんと不妊領域に特化して事業を行っている。
16年よりメルクバイオファーマの執行役員、不妊領域の事業部長を担っていた池田秀子社長は20年、成長著しいベトナムのマーケットを任され、メルク・ベトナムの社長となった。
「ベトナムはとにかく活気があり、そして変化も顕著です。22年の実質GDP(国内総生産)の成長率(推計値)は前年比8.02%※1と発表されたように、伸び盛りの国といえますが、行政の仕組みや制度もすぐに変わるので対応に気を使う部分も多い。そしてメルクのベトナム法人と日本法人の違いは、男女の構成が全く違うところです」(池田社長)
メルク・ベトナムの社長に就任し、200人ほどの社員を束ねることとなった池田社長だが、社員の半数以上は女性で、おのずとリーダーの女性比率も高い。
「これは当社だけではありません。同業他社でも女性のリーダーが多く、上の立場に立つ人が、女性だから、男性だからという視点はありませんし、女性の私が社長をしていても相手に驚かれることもありません」(池田社長)
そうはいっても、日本人の女性が、それも海外で社長になるというのは、高いハードルがあるように感じるが、メルクではどのような仕組みや制度があるのだろうか。
次ページからは、メルクのDE&Iの観点から、多様な人材を成長・活躍させるための取り組みを紹介する。