「Feedback is a Gift」 の精神で、人も会社も成長する
ベトナムでは、転職はステップアップと捉えている人が多く離職率が高いため、報酬だけに頼らない施策が必須だ。「社員にとっていかに魅力的なキャリアと企業文化を提供できるかが勝負です」と池田社長。実際にメルク・ベトナムの離職率は低く、1桁の割合を維持している。
「大事なことは、性別・年齢・出身・カルチャーなどにかかわらず、全ての人が意見を言いやすく、活躍できる可能性があると感じていることだと思っています」(池田社長)
そのために池田社長は、会議の場での発言や質問を奨励することで、発言に対する心理的な安全性を担保するよう心掛けている。
また池田社長は、フィードバックカルチャーの構築にも力を入れている。
「フィードバックの中には改善提案も入るため言いにくいと思われがちですが、『Feedback is a Gift』です。相手の成長を思っていることが伝われば、立場に関係なく誰でも成長し活躍できるのだという実感につながり、社員もやる気を持って働こうと思ってくれるのではないでしょうか」(池田社長)
まずは社員の声を「聞くこと」から始めよう
とはいえ、こうしたオープンな企業文化を一朝一夕でつくることは難しい。では、一体何から始めればいいのだろうか。それに対する池田社長の答えは至ってシンプルで「まずは聞くこと」だという。それは、日本法人でエンゲージメントスコアを急上昇させた経験に裏打ちされていることであり、前述のフィードバックカルチャーにつながるものだ。
「最近、私がいいなと思ったのが、メルクグローバル・ヘルスケアビジネスのピーター・ギュンターCEOがWILの欧州支部で開催された女性だけの小さな会に参加していたことです。30人くらいの小さな会合だったのですが、CEOが一社員の質問に耳を傾け、真剣に答えている。トップが話を聞く姿勢をそんなふうに示すことがメルクの企業文化を構築しているのだと改めて感じました」
日本商工会議所が22年に行った調査(2880社が回答)では、女性管理職の割合が「0%」とした中小企業の割合は43.2%に上る※2。その中には、リーダーになりたくても声を上げられない女性もいるだろう。まずはその「声を聞く」ことからスタートしてはどうだろうか。