小川 例えば、業務効率化のためにフロントとキッチンの作業は兼務しているのですが、お客さまが来館された際にフロントでお待たせする、という状況は避けなければいけません。そこで「Gravio」の人感センサーを設置し、「LINE WORKS」で通知を受けることで、お客さまをお待たせしないような取り組みをしています。他にも、ミスが許されない温泉のバルブの開け閉めを常時監視したり、と重要な作業にも活用しております。ノーコードで開発できるので、スムーズに導入することができました。
コロナ禍の2020年に2カ月間休館したのですが、「LINE WORKS」はその際に全従業員と連絡を取るために導入しました。情報共有が円滑にできるようになったので、再開後も引き続き活用しています。
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現状維持は衰退、スモールスタートで現場がアップデートする
──老舗企業のDXという事例は多いものなのでしょうか。
平野 老舗とDXは遠いように感じますが、やはりDXのX(トランスフォーメーション=変革)に目を付けると、老舗ほど大きく変革できるともいえます。連綿と続くビジネスプロセスを変革することで、大きな効果が得られます。とはいえ、ここまで結果を出されている企業は珍しいと思います。
増田 すごく興味深い事例だと思っています。老舗となれば、DXを推進するのに苦戦するパターンが多いのですが、40年も前からチェーンストアマネジメントを行っているところが、勝因の一つだと感じました。
──老舗企業がDXを進めるにはリスクテークが必要になると思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか。
小川 老舗の温泉旅館だと、どうしても伝統的な部分を守るというスタンスになりがちです。しかし私は、「現状維持は衰退である」、と考えています。たとえ今が安定的だとしても、その先にチャレンジする姿勢を常に持っていないと、企業は必ず衰退します。だからチャレンジすることはリスクではなく成長のチャンスなのです。
平野 企業がビッグピクチャーを描き、何年もかけて設計して、全社を挙げてやるぞ、というのはビジネススピードが遅かった時代は良かったかもしれません。しかし、今はビッグピクチャーを描いているうちに、世の中が変わってしまいます。スモールスタートで始め、現場の感覚でアップデートし、それを拡張していくことが必須になってくると思います。
作業とサービスは別物、DXで作業を効率化させ、
サービスに注力する
──DXを推進するために経営者として重視すべきことは何ですか。