超高齢化社会が進む日本では、慢性疾患による医療費の負担が課題となっている。今年創立100周年を迎えるノボ ノルディスクは糖尿病医療の先駆者として、社会全体が協力して課題に取り組む必要性を説く。同社日本法人のキャスパー ブッカ マイルヴァン代表取締役社長に話を聞いた。

「社会の主要なステークホルダーとの協業が不可欠」 日本のヘルスケアに持続可能な課題解決を提案する100年企業ノボ ノルディスク ファーマ
キャスパー ブッカ マイルヴァン
代表取締役社長

2002年、英国のバース大学で経営修士号、05年、デンマークのコペンハーゲン大学で心理学修士号取得。デンマークとフランスのノボ ノルディスク関連会社でリーダー職を歴任。22年9月より現職。45歳。

「普通の生活」を糖尿病をもつ人に提供

 1922年、デンマークのノーベル賞受賞者アウグスト・クロウは、妻で医師のマリーと共に、発見されたばかりのインスリンを求めてカナダに渡った。マリーは糖尿病をもっていたが、当時糖尿病と診断されることは死の宣告と同じだった。二人は北欧でのインスリンの製造許可を取得し、ここからノボ ノルディスクの歴史がスタートした。23年のことである。

 以降100年間、同社は糖尿病をはじめとする慢性疾患用の医薬品とデバイスにイノベーションを起こし続けている。

「このエピソードは私たちにとって大切なものです。なぜなら、どのようにして当社が糖尿病を克服するための旅を始めたかを示しているからです。私たちは創業者の意志を受け継ぎ糖尿病克服に長年従事し、また現在では肥満症やその他の深刻な慢性疾患の変革を推進することにも取り組んでいます」と同社のキャスパー ブッカ マイルヴァン代表取締役社長は語る。

 創立後、取り組んだのは、体の生理的な役割を極力模倣できるようなインスリンを開発することだった。糖尿病でも普通の生活が送れるようにするには、血糖を健常者のようにコントロールできるインスリン開発が不可欠だ。インスリン用のペン型注入器(ノボペン⦅R⦆)を世界で初めて開発したのもノボ ノルディスクだ。

「糖尿病に対するスティグマが一部存在します。そこで勤務先でもインスリンが打てるように、ペンを模した注射器を開発したのです」

 今日、スマートフォンと連携できるデバイスの開発など、進化の歩みは止まらない。直近10年での大きなイノベーションは、2型糖尿病を対象とする治療薬「GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬」の飲み薬を世界で初めて開発したことだ。注射薬に比べ利用が容易な飲み薬の登場は、糖尿病治療にとって新たな治療の選択肢となった。