主要なステークホルダーと協業する必要がある

 都市における慢性疾患に対する「Cities Changing Diabetes(CCD)」プロジェクトはその一環だ。具体的には、都市における肥満と糖尿病の問題点を明らかにし、そこから得られた教訓を共有し、都市環境における糖尿病の劇的な増加への対応を後押しする。現在、世界で40以上のプロジェクトを走らせており、そのうち二つが日本で実施されている。2018年には福島県郡山市と、21年には千葉県旭市と提携し、地元の大学の医学部の協力も得て進めている。

 郡山市の調査結果では、移動手段として車を使わざるを得ず運動不足に陥りがちなことや、コンビニなどで手軽に買える食事は塩分や糖分が多く栄養が偏りがちになる現状など、都市部特有の問題も浮き彫りにした。

「糖尿病や肥満症は個人の責任にされがちですが、都市部にはそもそも健康的な生活を送るのが難しい事情があります。日本のヘルスケアの課題を解決するには、社会自体が変わって、健康的な生活を送れる場や制度を提供する必要があるのです。そのためには、社会の主要なステークホルダーが集まって持続可能な解決策を見いだすことが最も重要です。私たちが企業として貢献するのはもちろん、政策立案者、NGO、自治体など、 他のステークホルダーも一緒になって協業することが必要です」

 日本では健康問題は自己責任論で語られがちだが、キャスパー社長は社会全体が協力して解決することの重要性について力説する。そこには、同社が自らに課している社会的責任を全うする姿勢がうかがわれる。

 100年前の創業の精神を脈々と受け継ぎ、ノボ ノルディスクはこれからも慢性疾患と共に生きる患者と家族に寄り添い、社会を巻き込みながらイノベーションを起こし続けるだろう。

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JP23NNG00012 (2023年3月作成)