世の中のウェルビーイングへの関心の高まりを受け、企業もそれを自社の商品やサービスに取り込もうと注力する。しかしまだ始まったばかりで、各社とも試行錯誤をしている。そうした企業の取り組みを支援しようと動き出したのがNTTデータだ。長年にわたってクラウド型健康管理ソリューションを運営する同社は、そのノウハウや技術を活用し、企業が健康データを活用したサービス構想などを実データを用いてを検証できる「共創実証ラボ」を開設した。プロジェクトの中核を担う3人に、開設の狙いや目指す世界について話を聞いた。

 NTTデータは、早くから健康データに着目してきた。企業の従業員健康管理を支援するために2002年、クラウド型健康管理ソリューション「Health Data Bank®」(以下、HDB)の運用を開始。現在では約3000社・団体、約400万人が利用する、産業保険領域で広く知られたクラウド型サービスだ。同社デジタルウェルフェア事業部の吉行隆一課長代理が説明する。

「これまで、健康診断結果の管理は、紙でのやりとりが主流でした。それを電子データにすることにより、業務の効率化と健診結果のトレーサビリティーを実現しました」

 まさにDX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆けともいえる取り組みだが、社会のデジタル化が進みデータ管理が当然のように求められるようになった今、フェーズは次に移ろうとしている。それはデータの利活用だ。

「ここ数年、民間マーケットにおいて、健康データの利活用に対する関心が高まっています。そこで、健康データを活用したサービスなどを提供する企業に対して、生活者の健康データを安全・安心に収集し、企業が提供するサービスに引き継ぐバックヤードの仕組みとして、HDBをご提供しています。法人・金融分野のビジネスを展開する社内部門と連携しながら、クロスインダストリーでの新たなビジネスの創出に挑戦しています」(吉行課長代理)

NTTデータ デジタルウェルフェア事業部
湊 章枝 課長

 ところが、健康データの利活用は多くの企業において思うように進んでいないのが現状だ。HDBチームは2年の間に、さまざまな業界の約100社の企業と意見交換をしてきた。すると、データが集まりにくい、集めたデータを使うアイデアが出ないといった声が多く聞かれた。こうした課題を解決するために立ち上げられたのが「Health Data Bank 共創実証ラボ」だ。同部の湊章枝課長がこう説明する。

「近い将来、日常の至るところに健康データが溶け込み、生活者が健康データを活用してウェルビーイングを実現することが当たり前になると、私たちは考えています。そのためには、黎明期ならではの課題を打破しなくてはなりません。“少し先の未来社会”を再現することで、企業が抱える課題を私たちが共に解決し、健康データ活用の未来を切り開きたい。共創実証ラボは、そんな思いから生まれました」

 NTTデータが提示する“少し先の未来社会”とは何なのか。それをどう再現し、それがどう課題解決につながるのか。次ページでは共創実証ラボの詳細と、活用事例を紹介する。