この共創は、NTTデータがラボ利用企業や社員モニターと共につくり上げるという意味ももちろんあるが、湊課長によるとそれだけではない。
「共創実証ラボではさまざまな企業のサービスが検証されていますが、同じ社員モニターのデータを活用しています。企業同士が合意すれば、異なる業種の企業がデータを共有して、お互いの強みを掛け合わせたサービスを共同でつくることが可能になるのです。もちろん単体でサービスをマーケットインするための実証実験をすることも大事ですが、企業同士で何か新しい化学反応を生み出していくことにも期待しています」
さまざまな共創を巻き起こすことによって、同ラボはどのような未来をつくり出すのだろうか。健康データをキーに、生活者と日々の暮らしを取り巻くさまざまな商品やサービスとをマッチングすることで、生活者が自分に合うものに出合い、心地よく暮らす。これこそNTTデータが実現したい未来であり、健康データの利活用によって得られるベネフィットだと湊課長は強調する。
「今日では、自分の血液型を知っていることは当たり前ですが、昔は血液型の概念そのものがなく、輸血した血液型が合わず、多くの人が亡くなりました。20世紀の初めにABO血液型が発見されたことで、輸血は、『運を天に任せるようなもの』から『科学に基づく安全なもの』に変わりました。自分の血液型を把握し、安全な輸血を受けることが当たり前になったように、健康データから自分の心身の健康状態を把握することで、自分にぴったり合う商品やサービスを探し出すことができるようになるのです」
それを推進することによって、人々のウェルビーイングは確実に向上する。そしてそれは、大きな渦となる。湊課長が続ける。
「企業が生活者の健康データを収集・分析することで、健康状態に応じた商品・サービスなどを生み出す。生活者が健康データから自分の健康状態を把握し、たくさんある商品・サービスなどから自分に合ったものに出会う。近い将来、このサイクルが当たり前に回るようになるでしょう。健康データが日々の暮らしの至る所に溶け込み、生活者を取り巻くあらゆる商品やサービスが健康データを中心につながる『ウェルビーイング経済圏』が形成される。そして、生活者は意識することなく、自分にぴったり合うものに出会い、ウェルビーイングな生活を送れるようになる。そんな未来を私たちは思い描いています」
リテールビジネス改革本部 ICT企画部
ICT基盤チーム
小坂龍司 リーダー
健康への関心が低い層に対する訴求に期待
「Catch&Go」は、21年9月にNTTデータさんの社内にオープンしました。一般的な無人店舗にはレジがあり、購入する商品のバーコードを自分でスキャンしなければなりませんが、「Catch&Go」にはレジがなく、商品を持ってゲートを通過すると、アプリで自動的に決済が完了します。オープン当初は1日200人程度のお客さまでしたが、今では3倍の約600人に増え、手応えを感じています。
複数年分の健診結果やウエアラブルデバイスから取得したバイタルデータなどを基に購買を促すのは、とても面白い取り組みだと思います。健康に気を使っている人は、言われなくても健康のための商品を購入します。一方で、そうではない層が氷山の下にはたくさん眠っていて、そこにリーチするのはとても難しい。当社でもアプリを運営し、ユーザーが購入した商品の栄養素を分解して足りない栄養素を教えるといった取り組みをしています。本気で健康を考えているユーザーには好評なのですが、そもそも利用をしない関心の低い層へ、いかに認知を広げていくかが課題でした。今回の取り組みがこの課題を解決するきっかけになるのではないかと、大いに期待しています。
「NTTデータが考える健康データ利活用の今と未来」 ホワイトペーパーのダウンロードは下記から
https://www.nttdata.com/jp/ja/industries/healthcare/