サプライヤーやパートナーを含むエコシステム全体で、CX向上に取り組む

石浦   顧客と従業員のエンゲージメントが形成される瞬間、つまりマジックモーメントを把握するには、定期的にCXの測定を行うだけでなく、顧客との日常的なトランザクション(取引や相談など)ベースでVoC/VoEを集め、分析することも重要です。

PwCコンサルティング
シニアマネジャー
トランスフォーメーションストラテジー
石浦大毅氏

 米国のある製造業は、実際にトランザクションベースでCX、EXの測定を行い、製品開発部門などにもフィードバックする仕組みを構築していますし、日本においてもオンライン上のフリーマーケットを運営する会社が先行して取り組んでいます。

福田 お客さまの声を、普段お客さまとの接点がない部署にどうフィードバックしていくかは当社の課題で、そこにVOICEの仕組みを生かしていきたいと考えています。当社はもともと顧客志向が非常に強い会社で、フロントのカスタマーエンジニアなど日常的にお客さまと接している従業員たちは、さまざまな要望や悩み、あるいは苦情などを聞いているはずですが、今は個人技でそれに対応していて、組織としての団体戦での対応に必ずしもつながっていません。特に開発部門などにはダイレクトにお客さまの声を伝えて、製品・サービスの改善に生かしていくべきだと思います。

石浦 製品開発や保守を含む社内の各部門が連携するだけでなく、サプライヤーやパートナーなど外部の人たちも巻き込んで、エコシステム全体としてCX向上に取り組むことが多くの企業にとっての次のチャレンジで、それが大きな事業変革につながっていくと思います。

福田 当社も世界中で代理店やディストリビューターを通じて製品・サービスを提供していますが、バリューチェーン全体でのCXは可視化できていませんし、まだまだ改善の余地は大きいと思います。

武藤 PwCでは、企業変革の指針として、ROX(リターン・オン・エクスペリエンス*3)を提唱しています。これは、CX、EXに加え、経営陣のLX(リーダーシップエクスペリエンス)を連携させ、三つのエクスペリエンスから得られるリターンの総和を最大化していくものです。

 DXのように企業全体を貫く変革に取り組む際には、部門間の壁、経営と現場の距離、あるいはバリューチェーン全体での連携不足などが障害となり、期待通りの成果を創出できないことが多々あります。これを乗り越えるためには、「CX×EX×LX」の複眼で変革に挑むことが有効で、ROXを共通指針とすることで全体最適の視点が生まれます。

 個々のエクスペリエンスを向上させる個別具体的な取り組みだけでなく、CXとEXを相互に高めたり、LXの向上によってCXとEXを下支えしたりする視点を持つことで一体感のある変革を推進することができ、ひいてはさまざまな事業環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織へと進化できます。

 VOICEを軸にしたフジトラという全社DXプロジェクトは、ROXのコンセプトに共通する部分が多いと私は捉えています。

*1 「日本企業のDX推進実態調査2023」「日本企業のDX推進実態調査2022」(PwCコンサルティング)
*2 「Fujitsu VOICE」について、詳しくはこちら
*3 「ROX」について、詳しくはこちら

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